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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年11月3日

減量薬を使いながらキックボクシングをするとき|GLP-1受容体作動薬と筋肉量・運動の試験

薬局で減量薬の説明書を受け取り、かばんに入れた練習着を見ながら、今夜もキックボクシングへ行くか考えます。待っている間に練習予定を開くと、体重と一緒に筋肉も落ちるなら、打つ運動を続けて防げるのかという疑問が浮かびます。薬に運動を組み合わせて体力を保つ利点は報告されていますが、キックボクシングで筋肉の減少を防げるかは未検証です。 体重が軽くなること、筋肉を含む組織の重さが減ること、力を出しやすくなることは、それぞれ違う変化です。

この記事の要点
  • 除脂肪量の減少には筋肉以外も含まれ、減った重さをそのまま筋力の低下に読み替えない
  • 薬で減った体重に占める除脂肪量の割合と、減った除脂肪量の重さは別の物差し
  • 肥満の成人の試験では、薬に室内自転車と筋力運動を足すと、体の動きや心肺の体力が改善
  • 吐き気・嘔吐・下痢・便秘は薬の試験で多く報告された症状で、練習を強める判断とは切り離す
  • 自分の記録は体重だけにせず、握力・練習量・胃のむかつきを並べる

減量薬を使いながらキックボクシングをするとき|GLP-1受容体作動薬と筋肉量・運動の試験

薬局で減量薬の説明書を受け取り、かばんに入れた練習着を見ながら、今夜もキックボクシングへ行くか考えます。待っている間に練習予定を開くと、体重と一緒に筋肉も落ちるなら、打つ運動を続けて防げるのかという疑問が浮かびます。薬に運動を組み合わせて体力を保つ利点は報告されていますが、キックボクシングで筋肉の減少を防げるかは未検証です。 体重が軽くなること、筋肉を含む組織の重さが減ること、力を出しやすくなることは、それぞれ違う変化です。

GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑える働きのある、主に注射で使う薬です。研究でよく登場する除脂肪量は、体重から脂肪を除いた重さで、筋肉だけでなく骨や水分なども含みます。薬を使う人の運動を考えるには、この除脂肪量に加えて、筋力や階段を上り下りする力、胃腸の症状を見る必要があります。体重の減少だけを練習の成果とせず、運動を足した試験で何がよくなり、薬だけでは何が変わらなかったのかを確かめると、処方した医師に伝える内容も具体的になります。

要点

  • 除脂肪量の減少には筋肉以外も含まれ、減った重さをそのまま筋力の低下に読み替えない
  • 薬で減った体重に占める除脂肪量の割合と、減った除脂肪量の重さは別の物差し
  • 肥満の成人の試験では、薬に室内自転車と筋力運動を足すと、体の動きや心肺の体力が改善
  • 吐き気・嘔吐・下痢・便秘は薬の試験で多く報告された症状で、練習を強める判断とは切り離す
  • 自分の記録は体重だけにせず、握力・練習量・胃のむかつきを並べる

「筋肉まで落ちる」という話は、何を測った結果か

体重計の数字が下がると、脂肪が減ったのか、筋肉が減ったのかが気になります。しかし体重は筋肉や脂肪、水分などを合わせた体全体の合計なので、それだけで減った組織の内訳はわかりません。Karakasis(2025)は、糖尿病または過体重・肥満の成人を対象にした無作為化比較試験をまとめ、体の組成を調べました。無作為化比較試験とは、くじ引きのように参加者を分け、薬などを使う組と比べる組の結果を比較する方法です。

この研究は22試験、2258人の結果をネットワークメタ分析で検討しています(Karakasis、2025)。ネットワークメタ分析は、複数の治療の直接の比較と共通の比較相手を介した結果をつないで計算する方法です。GLP-1受容体作動薬とその仲間の薬で、除脂肪量の平均差は-0.86 kg、推定値の不確かさを示す95%信頼区間は-1.30〜-0.42 kgでした。体重が減る過程で、脂肪以外の組織の重さも減る傾向が示されています。

Karakasis(2025)では、減った体重の約25%を除脂肪量が占めました。これは体にもともとあった筋肉の約25%がなくなった、という意味ではありません。分母はもとの筋肉量ではなく減った体重で、分子も筋肉だけの重さではないからです。さらに、この分析は筋力や体の動きを測ったものではなく、結論の中心は体重・脂肪量・除脂肪量という体の組成です。

減った重さと減った体重に占める割合で、結論が違って見える

効き目の強い薬ほど除脂肪量も大きく減るという報告と、減量に占める除脂肪量の割合は偽薬と同じという報告があります。偽薬とは、有効成分を含まず比較のために使うものです。Karakasis(2025)は前者を、Look(2025)は後者を報告しています。同じ「減り方」という言葉でも、重さを見ているのか、内訳の割合を見ているのかで読み取る内容が変わります。

Look(2025)は、肥満・過体重の成人を対象にしたチルゼパチドの試験のうち、X線で脂肪や脂肪以外の組織を測る装置を使った参加者を分析しました。72週の変化を見ると、薬の群でも偽薬の群でも、減った体重の約75%が脂肪、約25%が除脂肪量でした。薬の群では除脂肪量の減少そのものは大きかった一方、減量の内訳の割合は似ていました。ここでいう「同じ」は、失った除脂肪量の重さが同じという意味ではありません。

よく言われること 研究で示されたこと 比べた相手・物差し 対象
強い薬ほど筋肉も落ちる 減量の大きい薬で除脂肪量の減少も大きい(Karakasis、2025) 複数の薬と対照条件、重さの差 糖尿病または過体重・肥満の成人
偽薬と割合が同じなら減っていない 減った体重の内訳が似ていても、除脂肪量自体は減った(Look、2025) 薬と偽薬、減量の内訳 肥満・過体重の成人
運動すれば筋肉量も守れる 運動併用で体の動きと心肺の体力が改善(Jensen、2026) 運動併用と薬単独、体力の測定 食事で減量した肥満の成人

Karakasis(2025)は多くの試験をまたいだ重さの差を見ており、Look(2025)は同じ試験内の減量の内訳を見ています。前者は除脂肪量の減少を見落とさないための根拠になり、後者は薬だけが特別に筋肉を奪うという解釈を慎重にする根拠になります。Lookの性別や年齢別の検討は後から加えた解析で、測定の中心も体組成でした。両論文を合わせても、筋力やパンチの出しやすさを直接評価した結果にはなりません。

GLP-1と運動の併用試験は、食事で減量した後に行われた

薬と運動を組み合わせた研究は、薬を使い始めた初心者が、その日から好きな運動を自由に増やすという条件ではありません。Lundgren(2021)の参加者は糖尿病のない肥満の成人で、8週間の低カロリー食を終えてから、体重を維持する段階に入りました。その後、運動、薬、両方の組み合わせ、偽薬を使う条件を比べています。低カロリー食は試験の準備段階であり、読者が同じ食事制限を始める手順ではありません。

Lundgren(2021)では、薬と運動を組み合わせる方法が、どちらか単独よりも減量後の体重維持に優れていました。さらに、血糖の指標とインスリンへの反応、心肺の体力がそろって改善したのは併用群でした。インスリンへの反応とは、血糖を調節するホルモンが体で働きやすいかという意味です。結果には体重の維持だけでなく、体の働きを測った指標も含まれています。

同じ試験の体力の変化を詳しく調べたJensen(2026)では、運動の中身は室内自転車の間欠的な運動と、複数の筋力種目を続けて行う運動の組み合わせでした。間欠的な運動は、強く動く時間と負担を軽くする時間を交互に置く方法です。打つ運動にも動く時間と休む時間はありますが、使う筋肉や衝撃、動作の難しさまで同じになるわけではありません。この試験で改善があったのは、内容を組み立てた有酸素運動と筋力運動を薬に加える条件です。

体重あたりの筋力が上がることと、筋肉が増えること

筋力には、実際にどれだけ力を出したかという値と、体重を考慮した値があります。体重あたりの筋力は、出せる力を体重で割って表すため、力そのものが変わらなくても体重が軽くなると上がります。Jensen(2026)は、食事で減量した肥満の成人について、この体重あたりの筋力を調べています。体の重さに対して力をどれだけ出せるかを見る指標であり、筋肉の量を測る指標とは異なります。

Jensen(2026)で体重あたりの筋力の変化は、偽薬群-7.8%、運動群-0.4%、薬群+1.0%、併用群+3.3%でした。運動、薬、併用の各群では、偽薬群に比べてこの指標が高く保たれました。著者は、体重が軽くなり、筋力そのものが保たれたことによる結果と説明しています。併用群の値を「筋肉が+3.3%増えた」と表現すると、測ったものが変わってしまいます。

またJensen(2026)では、薬だけの群で階段の上り下りの速さや心肺の体力は改善せず、運動を加えた群では改善しました。体重あたりの筋力が保たれることと、階段で動きやすくなることは、自動的に一緒に起きる変化ではありません。体を動かす能力には、力の大きさのほか、動作を続ける力も関わります。薬単独でも体重あたりの筋力の値はよかった一方で、体の動きと心肺の体力には運動を加える利点がありました。

この研究は、もとの試験のデータから体力を詳しく検討した二次解析です(Jensen、2026)。Lundgren(2021)とは別の参加者で同じ結果を再現した研究として数えるのではなく、同じ試験を別の評価項目で見たものです。体組成を測ったLook(2025)の試験とも、使った薬や対象の条件が異なります。除脂肪量が減った研究と、筋力そのものが保たれた研究は、測定項目と試験の組み立てが異なる結果として併記する必要があります。

胃腸症状がある日と、薬を終えた後の体重は別の課題

練習を続けるうえでは、体重や筋力より先に、その日に食事や水分を取れているかが問題になる場合があります。Moiz(2025)は、糖尿病のない過体重・肥満の成人を対象とした試験を集めた系統的レビューで、有害事象を検討しました。系統的レビューは、あらかじめ決めた基準で研究を集め、結果と研究の質を点検する方法です。有害事象は、試験中に生じた望ましくない症状などを指します。

Moiz(2025)では、胃腸に関する有害事象は薬の群で47〜84%、偽薬の群で13〜63%と報告されました。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、便秘で、薬をやめる必要のある有害事象や重い有害事象はまれでした。これらの割合は試験ごとの幅であり、全参加者をまとめた平均ではありません。研究どうしのばらつきが大きいため、著者らは数値を単一の割合に統合していません。

胃腸症状の頻度を示したMoiz(2025)の結果は、むかつく日に激しく打ってもよいという根拠にはなりません。食べられない、吐いてしまう、ふらつくという状態で練習量を増やすのは避け、症状の確認を先にします。吐き気の強さを薬の効き目や運動の達成度として扱うと、体調の悪化を見逃しやすくなります。薬の試験で多かったのは胃腸の症状であり、体重だけを追う記録では拾えない問題です。

Berg(2025)は、薬を中止した後の体重を調べた試験をまとめ、体重が戻ることを報告しました。生活習慣の指導の有無にかかわらず戻りが見られ、薬で減った量の大きさとも関係していました。これは服薬中の体力改善とは別の問いで、運動を続ければ薬を終えても体重は戻らないという保証にはなりません。運動併用の利点を示す試験と併せて読む必要があり、中止後に体重が戻るというBergの結果も残ります。

4週間、体重・握力・練習量を別々に残す

自分で試すのは薬の使い方の変更ではなく、体の変化を観察する記録です。期間は4週間とし、これは自分の記録の期間で、研究で効果を判定した期間とは区別します。Jensen(2026)が筋力と体重あたりの筋力を区別して評価したことを参考に、体重と力の記録を並べます。体調に問題がない日の記録も残しておくと、不調が出た日の練習内容と見比べられます。

  • 体重と握力を同じ日に測る。 4週間、週1回、同じ朝に体重をkgで、握力計が使える場合は左右の握力をそれぞれkgで記録します。Jensen(2026)の筋力そのものが保たれたという結果を手掛かりに、体重が減っても力の値が保たれているかを見ます。握力は家庭での観察項目として選ぶもので、この試験の筋力測定を再現する検査ではありません。
  • 練習の中身と時間を書く。 Jensen(2026)の運動群は、週に中央値2.65回、合計116分、最大心拍数の79%の強さで運動しました。記録欄にこの研究条件を添え、自分は練習した日ごとに、ミット打ち、移動の練習、筋力運動の内容と分数を書き、週ごとに回数と合計時間をまとめます。処方した医師にその記録を見せ、室内自転車と筋力運動を組み合わせた試験とは運動内容が違うことも含めて、自分に合う量を確かめます。
  • 胃のむかつきは練習前後に書く。 Moiz(2025)で多かった吐き気・嘔吐・下痢・便秘を確認項目にし、練習の日は胃のむかつきを0〜10で記録します。0はむかつきなし、10は自分が考える最も強いむかつきと決め、3以上の日は練習の強さを落とします。この点数は自分の記録用の目安で、研究が定めた安全基準ではなく、めまい・強い腹痛・続く嘔吐が出たら点数に関係なく練習をやめます。

研究の回数や分数は、初めて運動する人の達成ノルマにはしません。Jensen(2026)の数字は、食事で減量した肥満の成人が、内容を組み立てた運動に取り組んだ実績です。自分の記録では、体重が下がっているかに加え、握力の値と胃腸症状がどう動いたかを並べ、診察時に見せます。試験で体の動きや心肺の体力が改善した背景には、単に練習時間を増やすのではなく、有酸素運動と筋力運動を組み合わせた条件があります。

よくある質問

除脂肪量が減ったら、パンチの力も落ちますか

除脂肪量には水分や骨も含まれ、減った重さからパンチの力の変化を計算することはできません。Karakasis(2025)とLook(2025)が測った中心は体組成で、Jensen(2026)が検討したのは筋力や体の動き、心肺の体力です。パンチを強く打てたという感覚と体組成の数値も別のものなので、薬を使っている間は体重の変化と力の変化を同じ結果として扱わないことが大切です。

キックボクシングだけで筋力運動の代わりになりますか

Jensen(2026)の運動は、室内自転車に複数の筋力種目を組み合わせた内容でした。ミット打ちにも全身を動かす要素はありますが、試験の筋力運動と同じ負荷がかかるとは限りません。練習の予定を伝えるときは、種目名だけで済ませず、打つ運動と筋力運動がそれぞれどれくらい含まれるかを示すと、試験で効果が出た運動との違いを具体的に伝えられます。

薬だけでも体重あたりの筋力が保たれたなら、運動は不要ですか

Jensen(2026)では薬単独でも体重あたりの筋力は偽薬より高く保たれましたが、階段の上り下りの速さや心肺の体力は改善しませんでした。運動を加えた群ではそれらが改善しており、体重あたりの筋力だけで運動の必要性を判断すると、この違いを見落とします。練習の目的には、体重を減らすことに加え、日常で動く力を維持することも含められます。

この記事の限界

薬と運動の試験は主に肥満・過体重の成人が対象で、体組成の試験と、食事で減量した後の体力の試験では、薬も測定項目も異なります。吐き気や下痢で食べられない、強い腹痛が続く、ふらつく場合は練習を中断し、処方した医師または内科を受診してください。その際は薬を使い始めた日と練習の日、症状が始まった時刻、食事や水分を取れているかを伝えます。Lundgren(2021)とJensen(2026)は同じ試験に基づくため、独立した試験で結果が繰り返されたという確かさとは異なります。減量薬を使いながらキックボクシングを続ける成人の筋力と胃腸症状の経過、さらに薬を終えた後の体重維持に関する答えはまだ出ていません。

参考文献

  1. Karakasis P. Effect of glucagon-like peptide-1 receptor agonists and co-agonists on body composition: Systematic review and network meta-analysis. Metabolism. 2025;164:156113.
  2. Look M. Body composition changes during weight reduction with tirzepatide in the SURMOUNT-1 study of adults with obesity or overweight. Diabetes Obes Metab. 2025;27(5):2720-2729.
  3. Lundgren JR. Healthy Weight Loss Maintenance with Exercise, Liraglutide, or Both Combined. N Engl J Med. 2021;384(18):1719-1730.
  4. Jensen SBK. Physical Fitness with Exercise and GLP-1 Receptor Agonist Treatment Alone or Combined After Diet-Induced Weight Loss: A Secondary Analysis of a Randomized Controlled Trial in Adults with Obesity. Sports Med. 2026;56(7):1785-1800.
  5. Moiz A. Efficacy and Safety of Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists for Weight Loss Among Adults Without Diabetes : A Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Ann Intern Med. 2025;178(2):199-217.
  6. Berg S. Discontinuing glucagon-like peptide-1 receptor agonists and body habitus: A systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2025;26(8):e13929.

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よくある質問

除脂肪量が減ったら、パンチの力も落ちますか

除脂肪量には水分や骨も含まれ、減った重さからパンチの力の変化を計算することはできません。Karakasis(2025)とLook(2025)が測った中心は体組成で、Jensen(2026)が検討したのは筋力や体の動き、心肺の体力です。パンチを強く打てたという感覚と体組成の数値も別のものなので、薬を使っている間は体重の変化と力の変化を同じ結果として扱わないことが大切です。

キックボクシングだけで筋力運動の代わりになりますか

Jensen(2026)の運動は、室内自転車に複数の筋力種目を組み合わせた内容でした。ミット打ちにも全身を動かす要素はありますが、試験の筋力運動と同じ負荷がかかるとは限りません。練習の予定を伝えるときは、種目名だけで済ませず、打つ運動と筋力運動がそれぞれどれくらい含まれるかを示すと、試験で効果が出た運動との違いを具体的に伝えられます。

薬だけでも体重あたりの筋力が保たれたなら、運動は不要ですか

Jensen(2026)では薬単独でも体重あたりの筋力は偽薬より高く保たれましたが、階段の上り下りの速さや心肺の体力は改善しませんでした。運動を加えた群ではそれらが改善しており、体重あたりの筋力だけで運動の必要性を判断すると、この違いを見落とします。練習の目的には、体重を減らすことに加え、日常で動く力を維持することも含められます。