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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年11月3日

産後におなかの真ん中が開いたままの女性のボクササイズ|腹直筋離開と運動の研究

洗面所で着替えるとき、おなかの真ん中のくぼみに触れ、運動を再開する前にその感触を確かめています。腹筋を使えば開きが戻るのか、それともボクササイズでさらに広がるのかが気になるところです。産後の女性を対象に腹筋運動を12週続けたGluppe(2023)では間隔が広がらず筋力は増えましたが、腹筋を使うだけで開きが閉じるとは言えません。 腹直筋離開とは、おなかの前にある左右の筋肉の間が開くことで、幅の変化と力の変化は別々に調べられています。

この記事の要点
  • 腹筋の運動で間隔が縮むという統合結果はあるものの、証拠の確かさは低いか、非常に低いという評価
  • Gluppe(2023)の腹筋運動では、間隔に変化がなくても筋力は増加
  • 離開があること自体と腰・骨盤の痛みは、Sperstad(2016)とBenjamin(2019)で明確な関係なし
  • 自分の記録では指で触れた幅、運動中の盛り上がり、痛みを別の欄に記載

産後におなかの真ん中が開いたままの女性のボクササイズ|腹直筋離開と運動の研究

洗面所で着替えるとき、おなかの真ん中のくぼみに触れ、運動を再開する前にその感触を確かめています。腹筋を使えば開きが戻るのか、それともボクササイズでさらに広がるのかが気になるところです。産後の女性を対象に腹筋運動を12週続けたGluppe(2023)では間隔が広がらず筋力は増えましたが、腹筋を使うだけで開きが閉じるとは言えません。 腹直筋離開とは、おなかの前にある左右の筋肉の間が開くことで、幅の変化と力の変化は別々に調べられています。

おなかに力を入れる運動を一律に避ける考え方と、回数を増やせば閉じるという考え方の間には、研究で確かめるべき違いがあります。腹筋の運動をした群で間隔が縮んだ研究も、運動しなかった群と差がなかった研究もあり、始めた時期や運動の中身が同じではありません。ボクササイズへの復帰を考えるときには、くぼみだけでなく、動作中のおなかの痛みや腰の使いにくさも気になるはずです。研究の対象となった運動と測定方法を追いながら、幅だけを運動の成果にしない理由と、自分の変化を残す方法を見ていきます。

要点

  • 腹筋の運動で間隔が縮むという統合結果はあるものの、証拠の確かさは低いか、非常に低いという評価
  • Gluppe(2023)の腹筋運動では、間隔に変化がなくても筋力は増加
  • 離開があること自体と腰・骨盤の痛みは、Sperstad(2016)とBenjamin(2019)で明確な関係なし
  • 自分の記録では指で触れた幅、運動中の盛り上がり、痛みを別の欄に記載

腹直筋離開の運動を考える前に、産後の経過を知る

おなかの真ん中に指が沈むと、筋肉が働いていない証拠のように感じるかもしれません。けれども、指で触れる間隔は、筋肉が出せる力や動作のしやすさそのものではありません。Sperstad(2016)は、初めて妊娠した女性を妊娠中から産後まで追い、離開のある人の割合と腰・骨盤の痛みを調べました。運動を割り当てずに経過を追う観察研究なので、ここで見えるのは出産の前後の推移です。

Sperstad(2016)では、離開の割合は妊娠21週で33.1%、産後6週で60.0%、6か月で45.4%、12か月で32.6%でした。時間とともに割合が下がる一方、産後しばらくたっても離開のある女性がいました。触診で数えた軽い離開が中心で、超音波の画像から間隔を細かく測った研究ではありません。この数字は、同じ女性の開きが何mmずつ戻るかを示すものではなく、それぞれの時点で離開があると判断された人の割合です。

同じSperstad(2016)では、重い物を週20回以上持ち上げると答えた女性に離開が多く、オッズ比は2.18でした。オッズ比は起こりやすさを比較する指標で、重い物を持たない群との関連を表します。ただし、物を持つ回数を研究者が割り当てた試験ではないため、持ち上げる動作が離開を生んだと決める数値にはなりません。日常で物を持つ人が全員同じ経過になるという結果でもなく、運動で使う重さの上限を定めた試験でもありません。

もうひとつ注目したいのは、Sperstad(2016)で離開のある女性とない女性が報告した腰・骨盤の痛みの量に差がなかったことです。離開が残ることと、痛みが続くことは同じ経過ではありません。指の感触が変わらない日にも、生活動作や痛みは別に評価する余地があります。この追跡では、開きの有無だけで産後の腰・骨盤の痛みを説明する関係は見られませんでした。

腹筋で幅が縮む結果には、どれほど確かさがあるか

腹筋の運動で間隔が縮むという話には、研究の裏づけがあります。de Oliveira(2025)は産後の離開に対する手術以外の方法を扱った34本の無作為化比較試験を集めました。無作為化比較試験とは、くじ引きのように参加者を群に分けて効果を比べる試験です。その結果をまとめて計算し直すメタ分析では、腹筋の運動をした群は何もしない群より間隔が平均6.82mm縮みました。

ただし、de Oliveira(2025)はこの結果の証拠の確かさを「非常に低い」と評価しています。これは、見えている平均の差を今後の質の高い試験が大きく変える可能性があるという意味です。試験の多くは小規模で、運動の内容や測る位置がそろっていませんでした。筋肉を伸び縮みさせる腹筋運動や電気刺激との組み合わせを含む比較であり、同じ腹筋運動を全員に行った成績ではありません。

Beamish(2025)も、産後の運動を調べた研究を集めた系統的レビューとメタ分析で、腹筋運動による間隔の縮小を報告しました。系統的レビューとは、あらかじめ決めた方法で研究を探し、結果や質を整理する手法です。安静時と頭を上げたときのどちらも、運動しない場合より距離が縮む方向でしたが、証拠の確かさは「低」でした。腹筋運動後の距離を調べた結果と、離開そのものの発生を防ぐ効果とは、評価する問いが異なります。

幅の平均が減ったと聞くと、自分にも同じ変化を期待したくなります。けれども平均値には、測る位置や運動の種類の違いを含む参加者全体の結果が入っています。日常の抱き上げ動作が楽になるか、練習中の痛みが減るかは、間隔の測定とは別に扱う必要があります。de Oliveira(2025)とBeamish(2025)が支持したのは腹筋運動後の距離の縮小であり、その効果の確かさには低い評価が付いています。

幅が変わらず、筋力だけが増えた試験もある

「腹筋で幅が縮む」という統合結果と異なるのが、Gluppe(2023)の試験です。産後6〜12か月で離開のある初産または経産の女性70人を対象に、頭上げ、上体を起こすカールアップ、ひねりを加えたカールアップを週5日・12週続ける群と、何もしない群を比べました。自宅で行う運動を標準化し、結果を測る人がどちらの群かを知らないようにしています。間隔は改善も悪化もせず、腹筋の力と厚みは増えました。

Gluppe(2023)が報告した一例では、へその2cm上を安静時に測った群間の平均差は1mm、95%信頼区間は-1〜4mmでした。信頼区間は、研究から推定する差の不確かさを幅で表したものです。この範囲は差がない値をまたいでおり、間隔を縮めたとも広げたとも判断しない結果でした。筋力は増えているので、幅が動かなかったことを運動のすべての効果がなかったという意味に置き換えると、測定結果を取り落とします。

さらにGluppe(2018)は、初産の女性175人の試験を解析し、産後6週からの指導付き運動教室と自宅での運動を調べました。離開の有無を指で評価し、もともと離開のない女性も含めて比較しています。何もしない群に対する産後12か月の離開の相対危険は1.04で、離開のある人の割合は減りませんでした。相対危険は群どうしの起こる割合の比で、腹筋の間隔そのものの平均差とは別の値です。

よく言われること 研究で得られた結果 比べた相手 対象・測り方
腹筋を使えば開きが縮む de Oliveira(2025)では縮小、確かさは非常に低い 何もしない群 産後女性、間隔の変化
カールアップで開きが広がる Gluppe(2023)では幅は変わらず筋力が増加 何もしない群 離開のある産後女性、超音波による幅
産後の教室で離開を減らせる Gluppe(2018)では離開の割合に差なし 何もしない群 初産女性、指による離開の有無

腰の痛みと開きの幅は同じ指標ではない

腹直筋離開が見つかると、腰が痛む理由もそこにあると考えがちです。Benjamin(2019)は12研究、2242人を含む系統的レビューで、離開と痛み、筋肉の働き、生活の質との関係を調べました。離開があること自体と腰・骨盤の痛みとの間に、有意な関係はありませんでした。一方、離開の程度が大きいことと、腹筋の力の弱さや腰痛の強さには関係を示す弱い証拠がありました。

「あるかないか」と「程度がどれくらいか」は異なる質問です。Benjamin(2019)の結果を、開きがあっても痛みは起きないという意味に読むのも、開きが痛みの原因だと読むのも行き過ぎです。元の研究の質は低く、測り方も違い、数値を統合する分析は行われていません。痛みのある人とない人を、指が入るかどうかだけで分ける考え方は、このレビューの結論に合いません。

骨盤底筋は、骨盤の底で臓器を支える筋肉です。Beamish(2025)では産後の骨盤底筋運動によって尿もれのオッズが37%下がりましたが、腹筋の間隔の縮小とは別の評価項目です。Gluppe(2023)の腹筋運動では、骨盤底の症状や腰・骨盤・おなかの痛みの程度は変わりませんでした。腹筋に力がついた結果と、尿もれや痛みが軽くなる結果を同じものとして扱わないことが大切です。

ボクササイズで気になるのは、幅に加えて、打ったときや体をひねったときに困る症状が出るかです。痛みのある動作を、開きを閉じるためという理由で繰り返す方法は適していません。Gluppe(2023)の対象は産後の離開がある女性でしたが、試験で行ったのは決められた腹筋運動で、打撃の反復ではありません。カールアップで幅が悪化しなかった結果から、痛みのあるミット打ちまで続けてよいとは言えません。

試験の違いを踏まえ、自分の変化を記録する

研究が食い違う理由は、単に新しい研究のほうが正しいからではありません。de Oliveira(2025)とBeamish(2025)は運動内容の異なる研究をまとめ、Gluppe(2023)は決められた腹筋運動の幅への影響を調べ、Gluppe(2018)は離開のある人の割合を比べています。開始時期も産後早期とその後では違い、測定も超音波による距離と指による判定で異なります。手元に残す記録も、幅、症状、行った運動が別々に読める形にします。

指で触れた間隔を同じ条件で残す

自分の記録の期間を4週間と決め、週1回、同じ朝に仰向けで膝を立て、頭を少し上げて、へその上と下で左右の筋肉の間に指が何本入るかを書きます。これはSperstad(2016)の指による測り方に近い形を、家での経過の記録に借りる方法です。測る位置も文章で残し、痛むときは押し込んで測るのをやめます。指の本数をmmへ換算せず、同じ姿勢での感触の記録として扱います。

練習後の症状を幅と別の欄に書く

ボクササイズの日は練習後に、真ん中が山のように盛り上がった回数、尿もれの有無、腰と骨盤それぞれの痛みを0〜10で書きます。Gluppe(2023)が幅に加えて腰・骨盤・おなかの痛みも評価したように、症状を別の項目にし、自分の記録の期間は4週間にそろえます。痛みの3以上が続く週は打つ強さを落とし、動作で痛みが増すときはその動作を中止します。この目盛りと調整の線は日々の記録用で、試験が決めたボクササイズの再開基準ではありません。

腹筋運動を足した日は内容も残す

腹筋運動をすでに行っている場合は、実施日ごとに頭上げか上体起こしかなどの内容と、運動後のおなかの痛みの有無を書きます。Gluppe(2023)の条件である週5日・12週を参考欄に添え、受診時には自分が実際に行った日数と内容を伝えます。研究と同じ量まで増やすことを目標にせず、どの動作の後に症状が出たかを記録に結びつけます。この試験では決められた腹筋運動を続けて筋力が増えても、腹直筋の間の幅は変わりませんでした。

よくある質問

指が入るうちは、腹筋を使う運動をやめるべきですか

指が入るという理由だけで、腹筋を使うすべての運動を避ける根拠にはなりません。Gluppe(2023)の産後女性の試験では、カールアップを含む運動で間隔は悪化せず、筋力が増えました。ただし、指での感触と超音波で測る幅は同じ精度の測定ではなく、痛みを伴う動作も別に扱う必要があります。腹筋運動の結果を参考にするときは、対象が出産から時間のたった女性で、内容が定められた運動だったことも含めて読みます。

幅が縮まなければ、運動は失敗ですか

幅が変わらないことだけで失敗とは判断しません。Gluppe(2023)では腹筋の間隔は変わらないまま、筋力と筋肉の厚みが増え、同時に測った痛みの程度には変化がありませんでした。幅、力、痛みという別々の結果があり、どれかの改善をほかの改善と同じ意味にはできません。間隔を成果のすべてにすると、力の変化を見落とす一方、幅が縮めば痛みも軽くなるという期待にもつながります。

おなかの開きが残っていると腰痛になりやすいですか

Sperstad(2016)の初産女性の追跡では、離開のある女性とない女性で腰・骨盤の痛みの量に差はありませんでした。Benjamin(2019)も離開の有無と痛みの明確な関係を認めず、離開の程度と腰痛の強さには弱い証拠を報告しています。したがって、開きがあるという事実だけで将来の腰痛を予測するのは難しい状況です。腰の症状は、指で触れた幅とは別に、どの動作で出るかまで含めて扱う必要があります。

この記事の限界

腹直筋離開の測定は指による離開の有無と超音波による距離が混在し、腹筋運動の統合結果も確かさが低いか非常に低い評価です。ボクササイズの打撃やひねりを続けた際の幅と症状は、これらの研究では測定されていません。おなかのふくらみが押しても戻らない、痛む、尿もれや下腹の重さが続く場合は、産婦人科か整形外科で評価を受けます。その際は出産からの期間と、起き上がりや打つ動作など症状が出る場面を伝えます。産後の女性がボクササイズを始めてから、腹直筋の間隔、腹筋の力、腰・骨盤の痛みがどのように変わるかを並べて追う試験が待たれます。

参考文献

  1. Sperstad JB. Diastasis recti abdominis during pregnancy and 12 months after childbirth: prevalence, risk factors and report of lumbopelvic pain. Br J Sports Med. 2016;50(17):1092-6.
  2. Beamish NF. Impact of postpartum exercise on pelvic floor disorders and diastasis recti abdominis: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2025;59(8):562-575.
  3. de Oliveira LC. Effects of conservative approaches for treating diastasis recti abdominis in postpartum women: A systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2025;104(23):e42723.
  4. Gluppe SB. Curl-up exercises improve abdominal muscle strength without worsening inter-recti distance in women with diastasis recti abdominis postpartum: a randomised controlled trial. J Physiother. 2023;69(3):160-167.
  5. Gluppe SL. Effect of a Postpartum Training Program on the Prevalence of Diastasis Recti Abdominis in Postpartum Primiparous Women: A Randomized Controlled Trial. Phys Ther. 2018;98(4):260-268.
  6. Benjamin DR. Relationship between diastasis of the rectus abdominis muscle (DRAM) and musculoskeletal dysfunctions, pain and quality of life: a systematic review. Physiotherapy. 2019;105(1):24-34.

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よくある質問

指が入るうちは、腹筋を使う運動をやめるべきですか

指が入るという理由だけで、腹筋を使うすべての運動を避ける根拠にはなりません。Gluppe(2023)の産後女性の試験では、カールアップを含む運動で間隔は悪化せず、筋力が増えました。ただし、指での感触と超音波で測る幅は同じ精度の測定ではなく、痛みを伴う動作も別に扱う必要があります。腹筋運動の結果を参考にするときは、対象が出産から時間のたった女性で、内容が定められた運動だったことも含めて読みます。

幅が縮まなければ、運動は失敗ですか

幅が変わらないことだけで失敗とは判断しません。Gluppe(2023)では腹筋の間隔は変わらないまま、筋力と筋肉の厚みが増え、同時に測った痛みの程度には変化がありませんでした。幅、力、痛みという別々の結果があり、どれかの改善をほかの改善と同じ意味にはできません。間隔を成果のすべてにすると、力の変化を見落とす一方、幅が縮めば痛みも軽くなるという期待にもつながります。

おなかの開きが残っていると腰痛になりやすいですか

Sperstad(2016)の初産女性の追跡では、離開のある女性とない女性で腰・骨盤の痛みの量に差はありませんでした。Benjamin(2019)も離開の有無と痛みの明確な関係を認めず、離開の程度と腰痛の強さには弱い証拠を報告しています。したがって、開きがあるという事実だけで将来の腰痛を予測するのは難しい状況です。腰の症状は、指で触れた幅とは別に、どの動作で出るかまで含めて扱う必要があります。