- 跳ぶ・速く踏み込む競技では、膝のお皿の下の腱の痛みが多く見られます。
- 重めの負荷でゆっくり動かす方法や、段階的に負荷を上げる方法には改善の報告があります。
- Rio(2015)では止める運動が直後の痛みを大きく減らしましたが、van Ark(2016)では継続後に動かす運動との差が出ませんでした。
- 試合や跳ぶ練習を続けながら、しゃがむ練習を追加しても効果が出なかった試験があります。
- 痛みの点数と跳ぶ練習の有無を並べ、腫れや悪化があれば運動を見直す必要があります。
跳ぶステップで膝のお皿の下が痛む初心者へ|膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の研究
階段を下りる途中、膝のお皿の下に痛みを感じて足が止まりました。跳ぶステップを始めてから気になりだした痛みに、休んだ方がよいのか、脚を鍛えた方がよいのかと迷う場面です。痛む跳躍は減らしつつ、腱への負荷を調整する運動を検討するのが基本で、Breda(2021)の患者を対象にした比較では、段階的な運動の方が24週後の症状と機能の改善で優れていました。 膝のお皿とすねの骨をつなぐ腱に負担がかかるジャンパー膝は、単に脚力が足りないから起こる、と片づけられる問題ではありません。
ボクササイズでは、跳び続ける時間や踏み込み方を変える余地があります。痛みをこらえて跳ぶことと、状態に合わせて腱に負荷をかける運動は、同じ「鍛える」でも内容が異なります。研究には、運動の直後に痛みが軽くなった結果、続けた後に機能が良くなった結果、競技を続けながら運動を足しても変わらなかった結果が並びます。どの運動が効くかだけでなく、何を減らし、何を測りながら続けたかまで見ると、休むことと動かすことを組み合わせる理由がわかります。
要点
- 跳ぶ・速く踏み込む競技では、膝のお皿の下の腱の痛みが多く見られます。
- 重めの負荷でゆっくり動かす方法や、段階的に負荷を上げる方法には改善の報告があります。
- Rio(2015)では止める運動が直後の痛みを大きく減らしましたが、van Ark(2016)では継続後に動かす運動との差が出ませんでした。
- 試合や跳ぶ練習を続けながら、しゃがむ練習を追加しても効果が出なかった試験があります。
- 痛みの点数と跳ぶ練習の有無を並べ、腫れや悪化があれば運動を見直す必要があります。
お皿の下は、跳ぶ動作の力を受ける場所
太ももの前側の筋肉が膝を伸ばすとき、その力はお皿を経て下の腱へ伝わります。跳び上がる場面だけでなく、着地して体を支える場面でも膝を伸ばす筋肉が働きます。そのため、跳ぶ動きを繰り返す種目では、お皿の下の腱の痛みが問題になりやすいのです。ジャンパー膝という名前は、この動作との結びつきを表しています。
Lian(2005)は、ノルウェーの一流選手613人を診察し、現在ジャンパー膝がある人の割合を調べました。全体では14.2%、バレーボールでは44.6%、バスケットボールでは31.9%で、自転車とオリエンテーリングでは該当する人がいませんでした。著者は、脚を伸ばす筋肉に大きな速さと力を求める競技で多いと結論しています。運動をしている人をひとまとめにせず、脚にどのような力が繰り返しかかるかを見る必要がある結果です。
ただし、この調査は選手のある時点の状態を調べた横断研究で、初心者が跳ぶステップを始めた後の発症を追ったものではありません。競技による違いには、跳躍の量だけでなく、それまでの練習歴や競技で求められる動作も重なっています。したがって、選手に多いという数字を、自分が発症する確率に置き換えることは避けます。Lian(2005)が報告した症状は軽い違和感だけではなく、競技能力への支障が長く続く例を含んでいました。
休むか鍛えるかは、負荷の中身で変わる
「痛むなら全部休む」「筋力不足だからもっと鍛える」という助言は、どちらも運動の内容を省いています。腱に負荷をかける治療の研究では、重さや動かす速さを選び、経過を見ながら進めています。いつもの練習をそのまま続けることと、こうした運動を取り入れることは別です。休む対象を跳躍に絞る発想と、腱に合う負荷を探す発想は両立します。
Kongsgaard(2009)は、腱の痛みがある男性39人を、注射、傾斜板でゆっくりしゃがむ練習、重めの負荷でゆっくり動かす筋力トレーニングに分け、12週間比べました。くじ引きで組を分ける無作為化比較試験という方法です。短期には各組で改善がありましたが、著者は注射の長期の成績は悪く、重めでゆっくり動かす方法は短期と長期の両方で良好だったとしています。目先の痛みの変化だけでは、先の経過まで同じとは限らない結果です。
重めの負荷という言葉だけを取り出すと、強く鍛えるほどよいという印象になりがちです。しかし、試験で使ったのはゆっくり動かす筋力トレーニングであり、勢いよく着地する練習を増やす方法ではありません。負荷を受ける腱は同じでも、動かす速さや繰り返す場面が違えば、練習全体の負担も変わります。Kongsgaard(2009)の好結果は、重めの負荷とゆっくりした動きを組み合わせた方法で得られたものです。
止める運動は、その場の痛みにはどう働くか
太ももに力を入れたまま関節を動かさずに保つ方法を、等尺性運動と呼びます。これに対して、関節を動かしながら力を出す方法があります。見た目に動きが少なくても、止める運動では筋肉が力を出しているため、腱にも負荷がかかります。楽に見えることと、痛みのある腱に適した強さであることは同じではありません。
Rio(2015)は、ジャンパー膝のあるバレーボール選手6人に、止める運動と動かす運動をそれぞれ行ってもらいました。運動後の痛みの低下は10点の尺度で平均6.8点と2.6点で、止める運動の方が大きい結果でした。止める運動による痛みの軽減は、少なくとも45分後まで続きました。同じ参加者が異なる方法を試す交差試験で、運動の直後に何が起きるかを調べた研究です。
一方、van Ark(2016)は、試合期の跳ぶ競技の選手29人を対象に、止める運動と動かす運動を週4回・4週間行う方法を比べました。両方の組で痛みは減ったものの、組の間には差がありませんでした。Rio(2015)では止める運動が上回り、van Ark(2016)では優位な差が出なかったという食い違いは、そのまま残ります。少人数の直後の比較と、試合期に継続した後の比較では、評価する時間の幅が異なります。
痛みが下がると、跳ぶ練習も元に戻せそうに感じるかもしれません。けれども、直後に痛みが下がったという結果は、腱が強い着地に耐える状態へ変わったことを測る結果ではありません。止める運動を跳ぶ前の準備として使う場合にも、痛みの軽減だけで練習量を増やす根拠にしないことが大切です。van Ark(2016)の比較では、継続後の痛みに対して動かす運動も同じように改善を示していました。
段階的に進めた運動と、しゃがむ練習の比較
Breda(2021)は、診察と超音波で腱の問題を確かめた患者76人を、段階的に腱への負荷を上げる運動と、ゆっくりしゃがむ練習に分けました。24週後、症状と機能をまとめた質問票の点数は、段階的な運動で28点、しゃがむ練習で18点改善しました。この質問票はVISA-Pと呼ばれ、痛みだけでなく活動の支障も評価するものです。段階的な運動が優れたという結論は、その場の痛みだけを比べた結果ではありません。
Breda(2021)が条件の違いを考慮して計算した組の差は9点で、95%信頼区間は1〜16点でした。信頼区間は、推定した差にどのくらいの幅があるかを示すものです。改善した点数を並べた値と、条件を調整した組の差は、役割が異なります。差の推定には幅がありますが、試験では段階的な運動の方が良い結果でした。
ここまでの試験は、同じ膝の痛みを扱っていても、比べた運動と評価の時期が異なります。短い時間で痛みを減らす方法と、長く続けて動ける範囲を回復させる方法を、同じ物差しで順位づけするのは適切ではありません。次の表では、研究の条件と結果が対応するように並べています。Breda(2021)の評価は症状と機能、Rio(2015)とvan Ark(2016)の比較の中心は痛みです。
| 運動の種類・研究 | 期間 | 比べた相手 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 重めでゆっくり動かす・Kongsgaard(2009) | 12週間とその後の追跡 | 注射、ゆっくりしゃがむ練習 | 短期・長期とも良好、注射は長期の成績が悪かった |
| 力を入れて止める・Rio(2015) | 運動直後から45分後 | 動かす運動 | 直後の痛みの低下は平均6.8点対2.6点 |
| 止める運動の継続・van Ark(2016) | 週4回・4週間 | 動かす運動の継続 | 両方で痛みが減り、組の差はなかった |
| 段階的に負荷を上げる・Breda(2021) | 24週 | ゆっくりしゃがむ練習 | 症状と機能の改善は28点対18点 |
| しゃがむ練習の追加・Visnes(2005) | 12週 | 通常の競技練習 | 膝の機能への効果はなかった |
跳ぶ練習を続けたまま足す方法では効果が出ない場合も
運動で良くなるという報告を読むと、今の練習に筋力トレーニングを足せばよいと思いやすくなります。そこで重要なのが、良くならなかった試験の条件です。治療のための運動も腱への負荷なので、競技で受ける負荷に上乗せされます。練習の種類を増やすだけでは、痛みを起こす動きがそのまま残ります。
Visnes(2005)は、ジャンパー膝のあるバレーボール選手29人を対象に、競技の練習と試合を続けながら、ゆっくりしゃがむ運動を12週追加しました。通常の競技練習をする組と比べて、膝の機能に改善はありませんでした。実際に行った運動量は、勧められた量の59%でした。負荷の残り方と実施量の少なさが同時にあるため、運動の種類だけを失敗の原因とする結果ではありません。
この試験が注意を促すのは、痛む動きを続ける生活の中へ、別の運動をただ追加する進め方です。初心者なら競技日程に合わせる必要は少なく、跳ぶステップを減らすという選択を取りやすくなります。足が床から離れる動きを控えても、踏み込みで痛みが強まるなら、その動きも負荷の見直しの対象です。Visnes(2005)の試験では、競技を続けた条件でしゃがむ運動を足しても、膝の機能は良くなりませんでした。
また、Kongsgaard(2009)で注射に短期の改善があったことは、練習を急いで再開するための方法選びとは別の話です。著者は長期の臨床的な成績が悪かったと述べています。注射を受けるかどうかを決める際は、痛みの変化だけでなく、腱の状態と運動計画を受診先で確かめる必要があります。短期と長期の結果がそろわなかったこと自体が、この試験の重要な所見です。
痛みを測りながら、跳ぶ量と運動を調整する手順
ここで行うのは、痛む動きを特定し、すでに教わった運動への反応を確かめる作業です。太ももに力を入れて止める運動は、腱の状態に合う方法と負荷を医療機関で教わってから取り入れます。van Ark(2016)が比較したのは週4回・4週間という継続条件であり、その期間を記録の区切りに使います。以下の点数による休止の目安は、試験で検証された安全の境界ではなく、無理を重ねないための実用上の目安です。
- 段差での痛みを記す。 週2回、手すりを使える同じ段差で、片脚で支えながらゆっくり下りたときの痛みを0〜10で書きます。Rio(2015)とvan Ark(2016)の片脚で膝に負荷をかけて痛みを評価する考え方に倣い、痛む側と動作をそろえます。腫れがある場合や動作中に痛みが強まる場合は測る動作を中止し、そのことを記します。
- 跳躍を減らした期間と運動を並べる。 痛む間は跳ぶステップを減らし、教わった止める運動をvan Ark(2016)と同じ週4回・4週間の区切りで続けます。実施した日、跳ぶ練習の有無、その日の痛みを0〜10で同じ紙に記します。運動中に痛みが増す場合は、その日の運動を中止して「増した」と記します。
- 休む日を点数と腫れで決める。 週4回・4週間の記録中も、痛みが0〜10で5を超える日は跳ぶ練習を休み、お皿の下が腫れたら運動を中止します。van Ark(2016)の継続期間に合わせた欄へ、休んだ日と理由を残します。点数が低くても腫れを優先し、記録のために痛みを繰り返し起こす必要はありません。
見比べるときは、止める運動の直後だけ軽かった日と、段差を下りる痛みが落ち着いてきた日を同じ意味にしないようにします。運動したかどうかだけでなく、跳ぶ練習を減らせたかも同じ紙にあると、変えた条件が見えます。うまく実施できなかった日を埋め合わせるために、次の日へ負荷をまとめて足す必要はありません。Visnes(2005)では実施量の不足があり、Breda(2021)でも指示どおり継続した人は両組とも半分以下でした。
よくある質問
少し休めば、元の跳ぶステップに戻してよいですか
休んだ直後に痛みが軽くなったことだけで、元の跳躍量へ戻す判断はしません。Breda(2021)の段階的な運動は、症状と機能の改善を追いながら負荷を進める方法でした。休む前と同じ階段の下りで痛むか、跳ぶ動きを再開すると強まるかという変化も重要です。痛みのある跳躍を減らすことと、適した運動を段階的に進めることを組み合わせます。
力を入れて止める運動だけ続ければよいですか
止める運動だけが優れているという結果ではありません。Rio(2015)では直後の軽減が大きかった一方、van Ark(2016)では続けた後に動かす運動との差がありませんでした。痛みを軽くする方法の選択肢にはなりますが、階段や練習で動ける範囲を回復させる計画は別に必要です。長く続けた成績では、段階的に負荷を上げる運動にも改善が報告されています。
膝のお皿の下が痛ければジャンパー膝ですか
痛む場所だけでは決まりません。Breda(2021)の参加者は診察と超音波で状態を確かめた人で、単に練習後に膝が痛い人を集めた試験ではありません。痛みが出始めた時期、跳ぶときと下りるときの違い、腫れの有無は、診察で伝える材料になります。研究の対象と自分の膝が同じ状態かを確かめることが、運動方法を選ぶ前提です。
この記事の限界
膝蓋腱の運動試験で測定した、運動を行った直後の痛みと、継続後の症状・機能は、同じ回復の指標ではありません。お皿の下が腫れる、数週間たっても階段の下りで痛む、跳ぶたびに強まる場合は、整形外科でいつからどちらの膝に、どの動作で痛みが出るかを、練習の内容と併せて伝えます。運動目的でボクササイズを始めた初心者の跳ぶステップを直接調べた研究は、ここで扱った試験には含まれません。跳ぶ競技の選手や長く症状が続いた患者で得られた運動の成績には、痛みが出始めたばかりの初心者へ当てはめるうえで対象の隔たりが残ります。
参考文献
- Kongsgaard ほか. Corticosteroid injections, eccentric decline squat training and heavy slow resistance training in patellar tendinopathy. Scand J Med Sci Sports. 2009;19(6):790-802.
- Rio ほか. Isometric exercise induces analgesia and reduces inhibition in patellar tendinopathy. Br J Sports Med. 2015;49(19):1277-1283.
- van Ark ほか. Do isometric and isotonic exercise programs reduce pain in athletes with patellar tendinopathy in-season? A randomised clinical trial. J Sci Med Sport. 2016;19(9):702-706.
- Lian ほか. Prevalence of jumper’s knee among elite athletes from different sports: a cross-sectional study. Am J Sports Med. 2005;33(4):561-567.
- Breda ほか. Effectiveness of progressive tendon-loading exercise therapy in patients with patellar tendinopathy: a randomised clinical trial. Br J Sports Med. 2021;55(9):501-509.
- Visnes ほか. No effect of eccentric training on jumper’s knee in volleyball players during the competitive season: a randomized clinical trial. Clin J Sport Med. 2005;15(4):227-234.
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よくある質問
少し休めば、元の跳ぶステップに戻してよいですか
休んだ直後に痛みが軽くなったことだけで、元の跳躍量へ戻す判断はしません。Breda(2021)の段階的な運動は、症状と機能の改善を追いながら負荷を進める方法でした。休む前と同じ階段の下りで痛むか、跳ぶ動きを再開すると強まるかという変化も重要です。痛みのある跳躍を減らすことと、適した運動を段階的に進めることを組み合わせます。
力を入れて止める運動だけ続ければよいですか
止める運動だけが優れているという結果ではありません。Rio(2015)では直後の軽減が大きかった一方、van Ark(2016)では続けた後に動かす運動との差がありませんでした。痛みを軽くする方法の選択肢にはなりますが、階段や練習で動ける範囲を回復させる計画は別に必要です。長く続けた成績では、段階的に負荷を上げる運動にも改善が報告されています。
膝のお皿の下が痛ければジャンパー膝ですか
痛む場所だけでは決まりません。Breda(2021)の参加者は診察と超音波で状態を確かめた人で、単に練習後に膝が痛い人を集めた試験ではありません。痛みが出始めた時期、跳ぶときと下りるときの違い、腫れの有無は、診察で伝える材料になります。研究の対象と自分の膝が同じ状態かを確かめることが、運動方法を選ぶ前提です。