- 雨の日に関節や腰の痛みで受診する割合が増えたとは、Jenaらの研究では認められませんでした。
- Dixonらの日々の記録では、湿度・気圧・風と慢性の痛みに小さい関係がありました。
- 膝の痛みの悪化と、急な腰痛の発症を調べた研究でも、雨を共通の原因とする結果にはなっていません。
- 練習の判断には天気に加え、いつもの痛みとの差、動く際の支障、腫れや熱感を使います。
雨の日に古いけがが痛むのは本当か|天気と関節・腰の痛みの研究
雨の日、窓を伝う水を見ながら昔痛めた膝を曲げ伸ばししても、今日の練習に出るかすぐには決められません。Jenaら(2017)の研究の結論は『降雨と、関節や腰の痛みによる外来受診との関係は見つからなかった』ですが、雨でうずくという実感まで消えるわけではありません。天気と痛みには小さい関係を認めた研究もあり、練習を休むかは予報だけで決めず、当日の痛みと日ごとの記録を優先するのが現実的です。
ボクササイズの前に気になるのは、気象の仕組みだけでなく、踏み込んだ際の痛みや翌日への響き方です。雨を理由に予定を取り消すべきか、逆に研究で関係が弱いなら痛みを押して動いてよいのか、その間で迷いやすくなります。調べられているのは、病院を訪れた記録、本人が毎日つけた痛み、膝や腰の症状が強まった日の天気で、それぞれ答える問いが違います。古いけがという呼び方だけで原因を決めず、どの痛みを何で測った結果なのかをたどると、天気との付き合い方を具体的に選べます。
要点
- 雨の日に関節や腰の痛みで受診する割合が増えたとは、Jenaらの研究では認められませんでした。
- Dixonらの日々の記録では、湿度・気圧・風と慢性の痛みに小さい関係がありました。
- 膝の痛みの悪化と、急な腰痛の発症を調べた研究でも、雨を共通の原因とする結果にはなっていません。
- 練習の判断には天気に加え、いつもの痛みとの差、動く際の支障、腫れや熱感を使います。
天気痛と関節の痛みは、何を測るかで答えが違う
「雨が降ると痛む」という言葉には、雨の日はうずく、雨の前に強まる、天気が崩れると病院へ行く、といった別々の出来事が含まれます。痛みが少し増えても受診せず過ごす人と、痛みの強さが変わらなくても予定どおり受診する人では、病院の記録に残る意味が違います。Jenaら(2017)が使ったのは外来の記録で、Dixonら(2019)が使ったのは本人による日々の痛みの記録です。研究の結論を読むときには、天気との関係があるかだけでなく、痛みそのものを尋ねたかを見る必要があります。
また、天気は雨の有無だけで表せるものではありません。湿度や気圧、風の速さを別々に扱う研究と、雨の日かどうかを比べる研究とでは、見つけようとする関係も違います。Dixonら(2019)が報告したのは湿度・気圧・風と痛みの小さい関係であり、雨の予報が出た日をすべて危険とする判定ではありません。雨という目立つ出来事と、研究で測った気象の項目を同じ意味に置き換えないことが大切です。
研究ごとの対象と測り方を並べると、結果の違いを追いやすくなります。病院の記録は受診という行動を、日記は生活の中の痛みを、悪化の日の比較は症状が強まるきっかけを扱っています。次の表では、同じ人の別の日を比べた研究と、人どうしを比べた研究も区別しています。
| 研究 | 対象 | 測り方と比べた相手 | 天気との関係 |
|---|---|---|---|
| Jenaら(2017) | 米国の高齢者 | 雨の日と雨でない日の外来記録 | 関節・腰の痛みの受診増加なし |
| Dixonら(2019) | 英国の慢性の痛みがある人 | 毎日の痛みと、その場所の気象 | 湿度・気圧・風に小さい関係 |
| Timmermansら(2014) | 欧州の変形性関節症の高齢者 | 天気に敏感と答えた人と、そうでない人 | 敏感と答えた人の痛みが強い |
| Ferreiraら(2016) | 膝の変形性関節症がある人 | 同じ人の悪化した日と別の日 | 悪化と天気の関係なし |
| Beilkenら(2017) | 急な腰痛が新たに起きた人 | 発症前と別の時期の天気 | 雨・湿度・風・気圧で発症増加なし |
大規模な受診記録では雨の日に増えなかった
Jenaら(2017)は、米国の65歳以上の1552842人が外来を訪れた11673392回の記録を調べました。年齢などの違いを考慮した関節・腰の痛みによる受診の割合は、雨の日が6.35%、雨でない日が6.39%でした。雨の日のほうが高いという方向ではなく、著者らは降雨とこれらの受診との関係を認めませんでした。調べた人数は大きくても、この割合は住民全体の痛みの有病率ではなく、外来受診の中で該当した割合です。
この研究を「雨の日には痛む人がいない」と読むと、測ったものを越えてしまいます。受診の記録には、家で膝をさすりながら過ごした日の小さな変化が、そのまま点数として残るわけではありません。予定された診察の当日と、痛みが最も強かった日が一致するとも限らず、受診日を痛みの発生日と同一視するのも不適切です。Jenaら(2017)も、病気の重さと痛みをもっと詳しく捉えたデータが役立つとしています。
一方で、大規模な結果を無視して「雨なら関節の不調が広く増える」と断定するのも行きすぎです。天気の影響が受診の増加として大きく現れるという見方は、この比較では支持されませんでした。痛みを訴える人の実感と、医療機関で数えられる受診の頻度は、別々の情報として残す必要があります。Jenaら(2017)の結果は、米国の高齢者における外来受診という範囲で、降雨との関係が見られなかったというものです。
毎日の痛みには小さい関係があった
Dixonら(2019)は、英国の慢性の痛みがある人がスマートフォンに記録した日々の症状を解析しました。解析対象は2658人で、データは15か月の期間に集められました。湿度・気圧・風の速さと痛みには、統計上はっきりしているものの、大きさとしては小さい関係がありました。全員がその期間を欠かさず記録したという意味ではなく、集められた毎日のデータと気象を照らした研究です。
「統計上はっきりしている」とは、単なる偶然だけでは説明しにくい関係だったという意味です。関係が大きいことや、天気を知れば個人の痛みを正確に予測できることとは別です。Dixonら(2019)の結果は、Jenaら(2017)の受診記録では拾いにくい日々の変化に近い一方、練習をする日と休む日を割り振って比べた試験ではありません。観察研究、つまり生活を変えるよう割り振らずに違いと結果を見る研究として、天気と痛みが一緒に変わる様子を捉えています。
この研究には、自分から参加した人の記録という特徴もあります。天気と痛みに関心があり、敏感だと感じる人が多く参加した可能性は、結果を読む際に残ります。雨の日も晴れの日も同じ方法で書くという仕組みは、印象に残った日だけを思い返す方法と異なります。Dixonら(2019)の特徴は、慢性の痛みを日々記録し、その場所の気象と照らして、小さい関連を見つけた点にあります。
天気に敏感という実感と、痛みが悪化する日は違う
Timmermansら(2014)は、欧州の変形性関節症の高齢者に、天気が痛みに影響すると感じるかを尋ねました。変形性関節症は、関節の軟骨などに変化が起き、痛みや動かしにくさが生じる病気です。天気の影響を感じる人は67.2%で、痛みの平均点は影響を感じる人が4.1、感じない人が3.1でした。この比較は、雨が降ったためにその人の痛みが増したかではなく、天気に敏感と答えた人のほうが痛みを強く報告したという結果です。
実感を尋ねる研究には、日々の困りごとを拾う意味があります。ただし、痛みが強い人ほど天気との関係に気づきやすいのか、気象の変化が痛みを強めたのかは、その比較だけでは決まりません。Timmermansら(2014)は痛みの日記も使っていますが、天気そのものと痛みを日ごとに対応させた設計ではありません。本人の実感を尊重することと、天気を原因として確定することは同じ作業ではありません。
Ferreiraら(2016)は、膝の変形性関節症の人について、痛みが悪化した日と別の日の気象を、同じ人の中で比べました。募集した345人のうち、悪化を経験した171人が解析に含まれ、悪化は開始時に報告した最も軽い痛みから0〜10の尺度で2以上増えることと定義されました。気温・湿度・気圧・雨量と、痛みが悪化する危険との関係は認められませんでした。天気に敏感だという実感の調査に対して、こちらは膝の症状がはっきり強まった日を捉えた結果です。
急な腰痛も、古いけがのうずきも一括りにしない
Beilkenら(2017)は、新たな急性腰痛が起きた981人について、痛みが始まる前の天気と別の時期の天気を比べました。急性腰痛は、急に始まった腰の痛みを指します。雨・湿度・風・気圧は、腰痛が起きる危険を増やす要因にはなっていませんでした。気温との小さい関連が一部の解析で出たものの、雨だから腰痛になるという広い説明を支える結果ではありません。
新たに腰痛が始まることと、前からある痛みが少し強まることでは、調べるべき日が異なります。始まった日の直前を比べるなら発症のきっかけが中心になり、毎日の日記を使うなら症状の波が中心になります。Beilkenら(2017)の対象はシドニーで急な腰痛を発症した人で、昔の捻挫や骨折の後に残った痛みだけを選んだ集団ではありません。古いけがという記憶の共通点だけで、膝の関節症や急性腰痛の結果を結びつけるのは避けたいところです。
練習の場面では、天気と関係が弱かったという結果を、痛みを押して動く理由に変えないことが大切です。強く踏み込むたびに痛む人や、腫れと熱感がある人には、症状を再現する練習は向きません。天気のせいと決めていつもどおりの負荷を続けると、症状そのものへの対応が遅れるおそれがあります。Beilkenら(2017)が調べたのは気象と発症の関係で、痛みのある日にキックボクシングを続けた際のけがや悪化の頻度ではありません。
予報より先に、痛みと練習を同じ欄に記録する
日記を使う目的は、雨を悪者にすることでも、天気の影響を否定することでもありません。Dixonら(2019)の毎日の記録に倣い、痛む日と痛まない日を同じように残すことです。以下の4週間は、自分の症状を記録して見直すための区切りとして設けます。痛みの目盛りはFerreiraら(2016)が用いた0〜10を参考にし、痛みなしを0、想像できる最も強い痛みを10として、同じ部位を同じ基準で採点します。
- 毎朝の欄を作る:4週間、起きた後の同じタイミングで、痛みを0〜10、天気を雨・曇り・晴れ、前日の練習を有・無で記入します。Dixonら(2019)のように毎日記録し、晴れて痛い日や雨でも軽い日も残します。練習した日は内容を短く添え、まだ練習前の朝の痛みと混同しないようにします。
- 雨と晴れを見比べる:2週間ごとに、雨の日と晴れの日それぞれの痛みの合計を、記入できた日数で割って平均を並べます。Dixonら(2019)の毎日の記録という考え方を使い、曇りの日は別の欄に残します。どちらかの日がほとんどない期間は日数も併記し、平均との差だけで自分の体質を決めずに記録を続けます。
- 練習前に普段との差を見る:Ferreiraら(2016)の悪化の定義に使われた2以上の増加を参考に、0〜10で普段より2以上高い日は、強く踏み込む練習を減らします。腫れや熱感がある日は中止し、そうした症状がなく軽く動く場合も、短い動作確認×2ラウンドでいったん区切り、各ラウンド後の痛みを書きます。短いラウンドでの確認は実行例として設けた区切りで、途中で痛みが強まればそこで終えます。
よくある質問
雨の日に痛むのは思い込みですか
実感だけを理由に思い込みと決める必要はありません。Timmermansら(2014)では天気に敏感と答えた人の痛みが強く、Dixonら(2019)では実際の気象と日々の痛みに小さい関係がありました。一方、痛みが強く記憶に残った日だけでは、晴れた日の症状との比較が抜けます。原因を急いで決めるより、同じ時刻に同じ部位を記録すると、日ごとの違いを後から見直せます。
雨の予報が出たら練習を休むべきですか
予報だけを休む理由にするより、当日の症状を先に見ます。Jenaら(2017)の外来記録やFerreiraら(2016)の膝の悪化の研究では、雨で一律に不調が増える結果にはなっていません。普段より痛みが強いなら踏み込みを減らすなど、記録と動作の支障を判断に加えます。腫れや熱感を伴う場合は、天気が晴れに変わっても練習を再開する理由にはなりません。
日記をつければ天気が原因と判定できますか
個人の日記は症状の傾向を見直す資料で、原因を確定する検査ではありません。雨の多い期間に練習も重なっていれば、天気と練習のどちらが関係したかを日記だけで決めるのは困難です。Dixonら(2019)は多数の人の毎日の記録をその場所の気象と対応させて解析しており、天気の印象だけを尋ねた調査とは方法が違います。自分の記録では、痛みが出た日と動作を具体的に説明できることも役立ちます。
この記事の限界
天気と痛みの研究は、高齢者の受診、慢性の痛み、膝の関節症、急な腰痛をそれぞれ扱っています。天気によらない腫れや熱感、夜も続く痛みは整形外科で、いつから、どの動作で痛むかを伝えてください。朝の手のこわばりが長く続く人は、続く時間や腫れる場所をリウマチ科で伝えてください。Dixon(2019)らの毎日の記録でも、参加者が自ら手を挙げた点と、気象との関係が小さい点は残ります。高齢の関節症患者を含む集団で得られた天気との関連は、古いけがを抱えて打撃の運動を始める成人にも共通する結果とまではいえない段階です。
参考文献
- Jena ほか. Association between rainfall and diagnoses of joint or back pain: retrospective claims analysis. BMJ. 2017;359:j5326.
- Dixon ほか. How the weather affects the pain of citizen scientists using a smartphone app. NPJ Digit Med. 2019;2:105.
- Timmermans ほか. Self-perceived weather sensitivity and joint pain in older people with osteoarthritis in six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). BMC Musculoskelet Disord. 2014;15:66.
- Ferreira ほか. The influence of weather on the risk of pain exacerbation in patients with knee osteoarthritis - a case-crossover study. Osteoarthritis Cartilage. 2016;24(12):2042-2047.
- Beilken ほか. Acute Low Back Pain? Do Not Blame the Weather-A Case-Crossover Study. Pain Med. 2017;18(6):1139-1144.
汗が落ちる溶岩の床の上で、最初のジャブを構えてみる
- 向く人: 相手と打ち合わずに、ミットとサンドバッグで汗をかきたい人
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よくある質問
雨の日に痛むのは思い込みですか
実感だけを理由に思い込みと決める必要はありません。Timmermansら(2014)では天気に敏感と答えた人の痛みが強く、Dixonら(2019)では実際の気象と日々の痛みに小さい関係がありました。一方、痛みが強く記憶に残った日だけでは、晴れた日の症状との比較が抜けます。原因を急いで決めるより、同じ時刻に同じ部位を記録すると、日ごとの違いを後から見直せます。
雨の予報が出たら練習を休むべきですか
予報だけを休む理由にするより、当日の症状を先に見ます。Jenaら(2017)の外来記録やFerreiraら(2016)の膝の悪化の研究では、雨で一律に不調が増える結果にはなっていません。普段より痛みが強いなら踏み込みを減らすなど、記録と動作の支障を判断に加えます。腫れや熱感を伴う場合は、天気が晴れに変わっても練習を再開する理由にはなりません。
日記をつければ天気が原因と判定できますか
個人の日記は症状の傾向を見直す資料で、原因を確定する検査ではありません。雨の多い期間に練習も重なっていれば、天気と練習のどちらが関係したかを日記だけで決めるのは困難です。Dixonら(2019)は多数の人の毎日の記録をその場所の気象と対応させて解析しており、天気の印象だけを尋ねた調査とは方法が違います。自分の記録では、痛みが出た日と動作を具体的に説明できることも役立ちます。