- 腕だけ、腹筋だけを鍛えた試験では、使った場所の脂肪が選んで減るという結果は測定法によって異なりました。
- 筋トレと有酸素運動をつないだ試験は部分やせの可能性を示しましたが、対象は少人数で、運動しない群がない試験もあります。
- Chen(2024)の過体重・肥満の人を対象にした分析は、運動による内臓脂肪の減少を示しています。
- 武道の研究は主に太極拳で、キックボクシングで部位別の脂肪を測った試験とは異なります。
キックボクシングでおなかや二の腕だけやせるか|部分やせの試験と全身の脂肪
スタジオの鏡の前で腕を上げると、二の腕やおなかの輪郭に目が向きます。パンチで腕を使い、キックでおなかに力を入れれば、気になる場所から脂肪を減らせるのでしょうか。おなかや二の腕だけがやせると期待して練習を選ぶ根拠は弱く、全身の脂肪が減ることと、使った場所の脂肪が優先して減ることは別です。部分やせとは、鍛えた所の脂肪だけが減ることを指します。
Vispute(2011)の腹筋運動の試験では、腹筋の持久力は上がっても、おなかの脂肪や腹囲は変わりませんでした。一方、筋トレと有酸素運動を組み合わせた小規模な試験では、鍛えた側の部位で脂肪がより多く減った結果もあります。同じ場所を使う運動でも、単独で行うか全身の運動につなぐかという運動の順番、比べた相手、脂肪を測る機械が違うため、「部分やせは起きない」という説明にも検討すべき例外があります。まず研究が測った脂肪の種類と部位を押さえると、鏡の輪郭やメジャーの数値だけでは見えない違いを読めます。
要点
- 腕だけ、腹筋だけを鍛えた試験では、使った場所の脂肪が選んで減るという結果は測定法によって異なりました。
- 筋トレと有酸素運動をつないだ試験は部分やせの可能性を示しましたが、対象は少人数で、運動しない群がない試験もあります。
- Chen(2024)の過体重・肥満の人を対象にした分析は、運動による内臓脂肪の減少を示しています。
- 武道の研究は主に太極拳で、キックボクシングで部位別の脂肪を測った試験とは異なります。
キックボクシングで痩せる部位は、使う筋肉から決まるか
パンチを繰り返すと腕が疲れ、キックではおなかに力が入ります。そこから「よく使った筋肉のすぐ上の脂肪が減る」と考えるのは自然ですが、筋肉を働かせたことと脂肪が減った場所は同じ測定項目ではありません。Vispute(2011)の試験は、この違いを腹筋の持久力とおなかの脂肪の両方を調べて検討しました。運動の成果を腹囲だけに置くと、実際に起きた筋肉の働きの変化を見落とします。
運動習慣のない健康な男女24人を対象にしたVispute(2011)は、腹筋運動をする群と何もしない群を無作為に分けました。無作為化比較試験とは、くじ引きのように群を分け、運動を始める前の違いが偏りにくくなるようにした比較です。腹筋運動は7種を10回ずつ2セット、週5日、6週間続ける条件でした。それでも体脂肪率、おなかの脂肪、腹囲、皮下脂肪の厚みは変わらず、改善したのは腹筋の持久力でした。
ここでいう皮下脂肪は、皮膚の下にある脂肪です。おなかには内臓の周囲につく内臓脂肪もあり、メジャーで測る腹囲は、そのどちらかだけを取り出した値ではありません。腕の周径にも筋肉などが含まれるため、周径が変わることと脂肪の量が変わることには測定上の違いがあります。Vispute(2011)が腹囲だけでなく皮下脂肪の厚みや体脂肪率まで測ったのは、見た目に近い指標と体の中身をともに比べる試験だったからです。
「どこからやせるか」という順位を求めるには、同じ運動をした人で複数の部位の脂肪を追う必要があります。腹筋が疲れたという感覚は、その順位の測定にはなりません。Vispute(2011)では、局所の運動を繰り返して持久力が向上した一方、対象としたおなかの脂肪には変化がありませんでした。
片腕だけを鍛えた試験では、測り方で結論が変わった
Kostek(2007)は、男女104人が利き腕でない側の腕だけを12週間鍛え、鍛えていない腕と比較した研究です。同じ人の両腕を比べる形なので、その人の食事や生活の変化は両側に共通します。鍛えた腕の脂肪だけが多く減れば、全身に起きる変化とは別に局所の効果を検討できます。おなかの前後の写真だけを比べる方法より、部分やせという問いに対応した比較です。
ただしKostek(2007)では、測定法によって結果が異なりました。皮膚をつまんで皮下脂肪の厚みを測る器具では、男性だけに鍛えた腕の脂肪が減る結果が出ました。一方、磁気を使って体内を画像にするMRIで腕全体を見ると、男女とも鍛えた腕と鍛えていない腕の減り方に差がありませんでした。女性では、皮下脂肪の厚みを測る方法でも局所の差はありませんでした。
この違いは、同じ「腕の脂肪」という言葉でも、測っている範囲が異なることを表しています。つまんだ場所の厚みと、画像で見る腕全体の脂肪は同じ値ではありません。Kostek(2007)の男性の結果を読む際も、器具による局所の厚みには差が出たことと、MRIによる腕全体の評価には差が出なかったことが対になります。
鏡やメジャーは日常の変化を追う道具として使えますが、研究の画像検査と同じ情報を返すものではありません。例えば腕の周径が減った記録だけでは、鍛えた場所の脂肪が他の場所より優先して減ったかは判定できません。Kostek(2007)の結果も、腕を鍛えれば腕全体の脂肪が選択的に減るという説明をMRIでは支持しませんでした。
部分やせが起きた試験は、何を組み合わせていたか
部分やせに肯定的な結果を出したBrobakken(2023)は、太り気味の中年男性16人の試験です。走る運動に腹筋とひねりの運動を加えた群を、同じくらいのエネルギーを走るだけで使う群と比べました。全身の脂肪の減り方は同程度でしたが、胴体の脂肪は腹筋を加えた群で697 g多く減りました。単に腹筋運動をした群の前後を見るだけでなく、運動で使うエネルギーをそろえた比較で差が出た点が特徴です。
女性を対象にしたScotto di Palumbo(2017)にも、部位による減り方の違いがありました。運動習慣のない女性16人を、上半身の筋トレの後に自転車をこぐ群と、下半身の筋トレの後に腕でこぐ運動をする群に分け、8週間続けました。上半身を鍛えた群では、脂肪量の変化は腕が-12.1%、脚が-4.0%で、腕の減少が大きい結果でした。下半身を鍛えた群では逆に脚の脂肪がより大きく減りました。
これらは、局所の筋トレと有酸素運動を続けて行う組み立てで、局所の筋トレを単独で行う試験とは違います。脂肪の測定も、X線で脂肪や骨などの量を調べるDXAを使って部位ごとに行っています。Scotto di Palumbo(2017)は運動しない比較群を設けておらず、Brobakken(2023)は男性だけを対象にした小規模な試験でした。どちらも部分やせを支持する結果ですが、比べた相手の違いまで含めて評価する必要があります。
| よく言われること | 研究で得られた結果 | 比べた相手 | 対象・研究 |
|---|---|---|---|
| 腹筋だけでおなかの脂肪が落ちる | 持久力は向上したが、脂肪と腹囲は変わらなかった | 何もしない群 | 運動習慣のない男女、Vispute(2011) |
| 腕を鍛えれば腕の脂肪が落ちる | MRIでは両腕の減り方に差がなかった | 同じ人の鍛えていない腕 | 男女、Kostek(2007) |
| 全身運動に腹筋を足すと胴体がやせる | 胴体の脂肪がより多く減った | 同程度のエネルギーを走るだけで使う群 | 太り気味の男性、Brobakken(2023) |
| 筋トレの後の有酸素運動で部位を選べる | 筋トレをした側の部位で脂肪がより大きく減った | 別の部位の筋トレと持久運動を行う群 | 運動習慣のない女性、Scotto di Palumbo(2017) |
全身の運動で内臓脂肪を減らすこととは違う
Chen(2024)は、過体重・肥満の人4836人を含む84の無作為化比較試験をまとめました。用いたのはネットワーク・メタ分析という、複数の研究で直接比べた結果と、共通する比較相手を介した結果から、運動の種類どうしを比べる方法です。中くらい以上の強さの有酸素運動、筋トレ、両者の組み合わせ、高強度インターバル運動で内臓脂肪が減りました。高強度インターバル運動とは、強い運動と休息や軽い運動を交互に行う方法です。
Chen(2024)では、強い有酸素運動と高強度インターバル運動が、内臓脂肪を減らす方法として最も効果的な可能性がありました。筋トレの効果は最も小さく、対象を分けて見ると、女性と体脂肪率40%以上の人では内臓脂肪への効果が見られませんでした。これは、筋トレのあらゆる利点が女性にはないという意味ではありません。測った結果は内臓脂肪であり、腹筋の持久力や腕の筋力とは別の項目です。
おなかの内部の脂肪が減るという結果には、腹筋だけを使って周囲の皮下脂肪を減らすという条件は含まれていません。Chen(2024)の分析は、全身を使う運動の種類と内臓脂肪の変化を結びつけたものです。キックボクシングにも強く動いて休む構成はありますが、この分析でキックボクシングと他の運動の部位別の脂肪を直接比較したわけではありません。
そのため、息が上がる練習ほどおなかだけがやせる、と読み替えて練習量を増やす理由にはなりません。脂肪の減少だけを狙い、腹痛や腰の痛みがあるのに補強を追加する方法も避けたい選択です。Chen(2024)が評価した有酸素運動の結果と、Vispute(2011)で腹筋の持久力だけが上がった結果は、運動で得たいものを決める際に異なる判断材料になります。
武道なら脂肪が減る、という説明にも幅がある
de Souza(2020)は、過体重・肥満の人258人を含む武道の6試験を統合しました。メタ分析は、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。運動しなかった群と比べて、BMI、腹囲、体脂肪率に統計的に明確な差は出ませんでした。BMIは身長と体重から求める体格の指標で、部位ごとの脂肪量を測るものではありません。
de Souza(2020)の腹囲の群間差は1.41 cm、95%信頼区間は-0.72〜3.54 cmでした。信頼区間は推定値の不確かさを示す幅で、この結果では減る方向と増える方向の両方にまたがっています。体脂肪率の群間差も-0.75%、95%信頼区間は-5.58〜4.08%でした。平均値だけを抜き出して、武道をすれば腹囲が増える、あるいは体脂肪率が下がる、と結論する結果ではありません。
さらにde Souza(2020)が集めた運動は主に太極拳で、打撃中心のキックボクシングの試験は含まれていません。研究の数が少なく、期間が短く、対象者も少ないことに加え、研究方法の弱さもありました。著者の結論は、武道が体格や体の組成に有効かどうかを決めるには材料が足りないというものでした。「武道」という分類名が共通でも、ゆっくり動く練習とミットを打つ練習では運動の内容が異なります。
初心者が知りたいのは、腹囲や二の腕の変化と普段の練習をどう結びつけるかです。今ある研究では、腹囲の前後の差を測る試験と、画像で部位別の脂肪を調べる試験が混在しています。de Souza(2020)のように武道をまとめた分析でも、運動しない群との差が明確でなかった以上、「打撃のある種目を選べば気になる場所が落ちる」という約束を支える結果にはなりません。
練習と体の変化を並べる記録の手順
自分の変化を見る期間は8週間とし、体重だけでなく腹囲と二の腕の周径を並べます。この長さは、運動習慣のない女性を対象にしたScotto di Palumbo(2017)の試験と同じですが、ここでは自分の記録の期間として使います。研究と同じ筋トレや運動量を再現する計画ではなく、練習内容と体の測定値の対応を残す方法です。研究では筋トレの後に有酸素運動をつないでいたため、練習の合計時間だけでなく中身と順序も記録に含めます。
- 測定条件をそろえる: Scotto di Palumbo(2017)の8週間という観察の長さを借り、2週ごとに同じ朝の同じ時刻に測ります。腹囲はへその高さ、二の腕は肩と肘の真ん中で、cm単位の値を体重と同じ行に書きます。腕は毎回同じ側を選び、メジャーを当てた位置も記録して、次に測る場所をそろえます。
- 運動の中身を残す: Scotto di Palumbo(2017)の筋トレの後に有酸素運動をつないだ条件を参考に、練習の日はミット打ちの分数と腹筋・腕の補強の分数を別々に書きます。行った順番も添え、8週間の間に補強だけを増やした日が判別できるようにします。腹痛や腰の痛みが出たら、その日の補強は中止し、再開時は回数を半分にして、痛みを繰り返す動作を続けません。
- 経過を比べる: Scotto di Palumbo(2017)と同じ8週間の区切りで、開始時からの腹囲と二の腕のcmの記録を体重と並べて見返します。体重が変わらず腹囲だけが減ったか、腕と腹囲の両方が変わったかを文章でも残します。研究が部位別の脂肪を機械で測ったのに対し、この記録で得られるのは周径の変化なので、結果の欄には「脂肪が減った」ではなく「腹囲が減った」と書きます。
よくある質問
腹筋運動を続ける意味はありますか
おなかの脂肪を減らすことだけを成果にしなければ、腹筋の働きに注目する意味があります。Vispute(2011)の運動習慣のない男女の試験では、腹筋の持久力は上がった一方、おなかの脂肪と腹囲は変わりませんでした。腹筋運動を続けやすくなったことは持久力の変化として受け止め、脂肪の減少とは別に評価できます。おなかが疲れるほど行ったかどうかは、部分やせの判定には使いません。
女性なら腕の筋トレの後に自転車をこぐとよいですか
Scotto di Palumbo(2017)には、その組み合わせで腕の脂肪が脚より大きく減った結果があります。ただし、相手は運動しない群ではなく、下半身の筋トレと腕こぎを組み合わせた群でした。女性での可能性を示す材料ですが、全員が同じ減り方をするという処方ではありません。ミット打ちを自転車こぎに置き換えた場合の差まで測った試験ではなく、まず対象になった運動の組み合わせを押さえる必要があります。
腹囲が減ったら部分やせに成功したと言えますか
腹囲の減少は記録できますが、それだけで局所の脂肪が優先して減ったとは判定できません。Kostek(2007)では、同じ腕でも皮下脂肪の厚みとMRIによる評価で結論が異なりました。Brobakken(2023)のように、全身の脂肪の変化と胴体の脂肪の変化を別に測り、比べる群を置いて初めて局所の差を検討できます。家庭の記録は腹囲がどう動いたかを追うもので、脂肪が減る場所を証明する試験とは異なります。
この記事の限界
部分やせを比較した運動は片腕の筋トレ、腹筋運動、筋トレと有酸素運動の組み合わせで、脂肪の測定範囲や対照群もそろっておらず、部分やせに肯定的な結果と否定的な結果が並んでいます。食事を変えていないのに体重が急に減る、おなかだけが張って大きくなる場合は、運動による変化と決めつけず内科を受診し、いつから、体重が何kg変わったか、張りや痛みが出る時刻を伝えてください。取り上げた武道の分析は主に太極拳であり、キックボクシングの前後におなかや二の腕の脂肪量を部位別に測った試験はありません。対象の多くが過体重の人や運動習慣のない少人数の男女で、日常的にミットを打つ女性の脂肪の減る場所や順序には当てはめにくい面があります。
参考文献
- Kostek MA. Subcutaneous fat alterations resulting from an upper-body resistance training program. Med Sci Sports Exerc. 2007;39(7):1177-85.
- Vispute SS. The effect of abdominal exercise on abdominal fat. J Strength Cond Res. 2011;25(9):2559-64.
- Chen X. Effects of various exercise types on visceral adipose tissue in individuals with overweight and obesity: A systematic review and network meta-analysis of 84 randomized controlled trials. Obes Rev. 2024;25(3):e13666.
- de Souza F. Effectiveness of martial arts exercise on anthropometric and body composition parameters of overweight and obese subjects: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health. 2020;20(1):1246.
- Brobakken MF. Abdominal aerobic endurance exercise reveals spot reduction exists: A randomized controlled trial. Physiol Rep. 2023;11(22):e15853.
- Scotto di Palumbo A. Effect of combined resistance and endurance exercise training on regional fat loss. J Sports Med Phys Fitness. 2017;57(6):794-801.
汗が落ちる溶岩の床の上で、最初のジャブを構えてみる
- 向く人: 相手と打ち合わずに、ミットとサンドバッグで汗をかきたい人
- 向く人: 運動から離れていて、構えとフォームから教わり直したい人
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よくある質問
腹筋運動を続ける意味はありますか
おなかの脂肪を減らすことだけを成果にしなければ、腹筋の働きに注目する意味があります。Vispute(2011)の運動習慣のない男女の試験では、腹筋の持久力は上がった一方、おなかの脂肪と腹囲は変わりませんでした。腹筋運動を続けやすくなったことは持久力の変化として受け止め、脂肪の減少とは別に評価できます。おなかが疲れるほど行ったかどうかは、部分やせの判定には使いません。
女性なら腕の筋トレの後に自転車をこぐとよいですか
Scotto di Palumbo(2017)には、その組み合わせで腕の脂肪が脚より大きく減った結果があります。ただし、相手は運動しない群ではなく、下半身の筋トレと腕こぎを組み合わせた群でした。女性での可能性を示す材料ですが、全員が同じ減り方をするという処方ではありません。ミット打ちを自転車こぎに置き換えた場合の差まで測った試験ではなく、まず対象になった運動の組み合わせを押さえる必要があります。
腹囲が減ったら部分やせに成功したと言えますか
腹囲の減少は記録できますが、それだけで局所の脂肪が優先して減ったとは判定できません。Kostek(2007)では、同じ腕でも皮下脂肪の厚みとMRIによる評価で結論が異なりました。Brobakken(2023)のように、全身の脂肪の変化と胴体の脂肪の変化を別に測り、比べる群を置いて初めて局所の差を検討できます。家庭の記録は腹囲がどう動いたかを追うもので、脂肪が減る場所を証明する試験とは異なります。