- 腕の重さだけで姿勢を保つ実験でも、肩の筋肉に疲れの兆候が出ています。
- 健康な女性の肩の持久力試験と、拳を顔の前に置くガードは異なる課題です。
- 筋電図で測る疲れ、主観的な肩の重さ、腱の病気は、それぞれ評価するものが違います。
- 腕を上げる仕事と肩の病気の関連は、腕の高さや力の強さ、研究の選び方によって評価がわかれます。
- 自分の記録では、保てた時間と休んだ後の肩の重さを組み合わせます。
ガードの腕が下がってくる初心者へ|腕を上げ続ける肩の疲れの研究
帰りの電車でつり革に手を伸ばすと、練習の後半に下がってきた腕の重さが肩に残っています。腕を上げ続けるとどれくらいで疲れるのかという疑問に関わる結果として、Persson(2000)は健康な女性の肩の実験で『筋電図で定めた筋疲労は速い回復を示した』と述べています。腕を上げて保つだけでも肩の筋肉は疲れますが、その疲れの兆候と肩の病気は別の結果です。ガードは拳を顔の前に置き、腕を上げて守る構えで、ミット打ちやシャドーボクシングでもパンチの合間に戻る姿勢になります。
息は続くのに腕だけ下がると、力不足を感じて長く我慢したくなるかもしれません。肩を調べた実験には、腕を止めておく間の筋肉の変化や、やめた後の回復を追ったものがあります。一方、肩の病気との関係は、仕事で腕を高く上げる人の調査が中心です。実験の保持時間を自分の合格点にする前に、腕の姿勢、重りの有無、疲れの測り方を確かめると、練習後の重さを読み違えにくくなります。
要点
- 腕の重さだけで姿勢を保つ実験でも、肩の筋肉に疲れの兆候が出ています。
- 健康な女性の肩の持久力試験と、拳を顔の前に置くガードは異なる課題です。
- 筋電図で測る疲れ、主観的な肩の重さ、腱の病気は、それぞれ評価するものが違います。
- 腕を上げる仕事と肩の病気の関連は、腕の高さや力の強さ、研究の選び方によって評価がわかれます。
- 自分の記録では、保てた時間と休んだ後の肩の重さを組み合わせます。
ガードで腕が疲れるのは、打っていない間も支えているため
ガードの場面で見落としやすいのは、パンチを出していない間の肩の働きです。腕を動かさずに置いていても、腕の重さに対して姿勢を支える力が要ります。Hagberg(1981)は腕を前へ上げる姿勢と横へ上げる姿勢で、肩の筋肉の疲れを筋電図(筋肉が働くときの電気を記録する方法)で調べました。見た目には止まっている腕でも、測定上は筋肉の働きが続いていました。
Hagberg(1981)の実験では、腕の重さが生む回転の負荷は、対象者全員で最大限に力を出したときの10%を超えていました。これは、肩で支える腕そのものが負荷になることを示す結果です。重りを追加していないから肩は休んでいる、という見方には合いません。前に上げるか横に上げるかという姿勢の条件も、測定された負荷と一緒に読む必要があります。ただし、この割合は実験で用いた腕を上げる姿勢の値であり、拳を顔の前に置くガードの負荷率としては使えません。
同じHagberg(1981)の測定では、多くの対象者で棘上筋と僧帽筋の上部に5分後の明らかな疲れの兆候が出ました。棘上筋は肩甲骨の上部にあって腕を上げる働きに関わる筋肉、僧帽筋の上部は首から肩にかけて肩甲骨を支える筋肉です。さらに、前へ腕を上げた姿勢の棘上筋と、横へ上げた姿勢の僧帽筋上部では、全員で1分以内に兆候が出始めていました。この短い時間は「もう腕が上がらない時刻」ではなく、電気信号に疲れに伴う変化が現れ始めた時点です。
肩のどこが先に疲れるかは、重りと姿勢でも変わる
「ガードが下がるなら肩の筋肉を強くすればよい」という説明には、どの筋肉をどの条件で測ったかという問題が残ります。Minning(2007)は、肩甲骨の面に沿って腕を上げ、重りに抵抗して止める課題を調べました。これは腕を振り上げる速さの試験ではなく、一定の姿勢を保つ間に筋肉がどのように疲れるかを見る実験です。パンチの強さと腕を保つ持久力を、同じ点数で表す設計にはなっていません。
Minning(2007)では、対象者はそれぞれの最大の等尺性筋力の60%に相当する重りを保持しました。等尺性とは、関節を動かさずに力を出すことです。この条件では三角筋の中部、つまり肩の外側を覆う筋肉の中央部分が、測った他の筋肉より速く疲れました。重りを支える強い負荷の下では、肩の筋肉どうしでも疲れ方が同じではなかったのです。
Hagberg(1981)が注目したのは腕の重さで保つ姿勢での棘上筋や僧帽筋上部で、Minning(2007)が最も速い疲れを認めたのは重りを持つ条件の三角筋中部でした。両者を並べると、「肩」という広い部位名だけでは実験の違いが隠れてしまいます。肩の上が重い感覚と外側が張る感覚を、同じ筋肉の疲れだと決める材料にもなりません。研究で用いた負荷を自宅でまねる必要はなく、Minning(2007)の結果は、重りに抵抗して腕を止めた条件での筋肉間の比較です。
保持時間と回復時間は、痛みの変化とは異なる
Persson(2000)は、肩に症状のない健康な女性を対象に、片側の肩の筋肉を使い続ける静的な持久力試験を行いました。静的とは、動きを繰り返すのではなく一定の姿勢や力を保つことです。平均の持続時間は330秒でしたが、これは参加者の試験結果の平均です。初心者がガードをその時間まで続けるための基準や、途中で腕が下がった人を判定する境目として設定された数ではありません。
Persson(2000)では、筋電図による疲れの回復は試験終了15秒後におよそ半分まで進み、10分後には完全またはほぼ完全でした。一方、肩の筋肉を押して痛みを感じ始める圧力は、試験後10分まで高い状態が続いていました。この「圧痛閾値」は押す力に対する痛みの感度を表し、高いほど強く押すまで痛みを感じにくいという意味です。筋肉の電気信号が回復する経過と、押したときの痛みの感度が戻る経過は異なっていました。
そのため、腕を休めた後に軽く感じること、押しても痛く感じにくいこと、同じ力を再び出せることを、ひとまとめの「回復」にしない方が記録は明確になります。練習中の自分の重さの評価は、機器で測った疲れとは測定方法が違います。とくに肩を何度も強く押して、回復したかを自分で検査する必要はありません。Persson(2000)が比べたのは筋電図と圧痛閾値の時間経過で、痛みに耐えて保持時間を延ばす練習の効果ではありません。
腕を上げる仕事で肩の病気が増えるという研究
肩の疲れの実験とは別に、仕事中の姿勢と診察で認めた肩の病気を比べた研究があります。Svendsen(2004)は、異なる職業群の男性1886人を対象にした横断研究で、腕を高く上げる時間と肩の状態を調べました。横断研究は、ある時点の状態を測って人どうしを比べる方法です。現在の仕事の姿勢と病気の関連を見る設計で、ガードを始めた人を追ってけがを数えた調査ではありません。
Svendsen(2004)では、上腕を90度より高く上げる時間が勤務時間の1%増えるごとに、棘上筋の腱炎のオッズ比は1.23、95%信頼区間は1.10〜1.39でした。腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、オッズ比は比較条件による病気のなりやすさの関連を表す指標です。信頼区間は、推定した値の不確かさを表す範囲です。この数値は発症者の割合そのものではなく、同研究では長期間の累積による大きな影響は示されませんでした。
van der Molen(2017)は、研究を一定の手順で集める系統的レビューと、結果を統合して計算するメタ分析を行いました。腕や手を上げる仕事と特定の肩の病気の関連は、オッズ比1.9、95%信頼区間1.47〜2.47で、根拠の確かさは中程度と評価されました。これらは、毎日の仕事でどれだけ腕を上げるかという負荷の調査です。数分の練習を挟んで休むボクササイズと、勤務中に腕を高く使う仕事とでは、姿勢も累積時間も異なります。
「疲れるから傷める」と結びつけるには証拠が足りない
仕事の研究でも、腕を上げることだけで肩の病気を説明する結論にはそろっていません。Wærsted(2020)は34本の論文をまとめ、腕を上げる仕事と肩の病気の関連は全体として限られた証拠と評価しました。肘が肩より高い90度を超える姿勢に絞ると、関連を示す証拠は中程度でした。また、大きな関連を示す研究ほど質の評価が高く、強い腕の挙上や診察による結果を扱う傾向がありました。
Curti(2023)は、作業の負荷を動画や機器で評価し、肩の病気を診察で確かめた研究に絞って見直しました。条件を満たしたのは5本で、腕を肩より上げる作業と、手で強く力を出す作業が重なった場合には、中程度の確かさの証拠がありました。単独の身体的負荷だけでは十分な証拠がない、という評価です。van der Molen(2017)との違いは、採用する研究と測定方法の基準、複合した負荷を扱うかという点にあります。
| 腕を上げ続けることへの見方 | 筋疲労と肩の病気の結果 | 腕の姿勢・仕事の負荷 | 測定した人や研究 |
|---|---|---|---|
| 腕を止めていれば休める | 電気信号に疲れの兆候が出た:Hagberg(1981) | 前へ上げる姿勢と横へ上げる姿勢 | 実験参加者 |
| 肩はどこも同じように疲れる | 三角筋中部が他の測定筋より速く疲れた:Minning(2007) | 重りを保つときの筋肉どうし | 症状のない人 |
| 腕を上げると肩を傷める | 腕・手の挙上と病気に関連:van der Molen(2017) | 仕事での負荷の違い | 労働者 |
| 腕を上げるだけが原因になる | 単独の負荷では証拠が不十分:Curti(2023) | 腕の挙上と強い手の力の組み合わせ | 厳しい評価条件を満たす職業研究 |
自分の保持時間と休みの変化を2週間記録する
ここからの2週間は、自分の変化を比べるための記録期間です。ガードの上達がその期間で起こると示した試験の日程ではありません。Persson(2000)の持久力と回復の測定を手がかりに、保てた秒数と休んだ後の重さを記録します。ミットやサンドバッグを打つ練習、相手に当てないシャドーボクシングの前後で行い、打ち合いを加える必要はありません。
記録のためでも、腕がしびれる、首から腕に痛みが走るときは練習をやめます。すでに腕を上げる動きで痛む人は、保持時間を延ばす試し方を控え、症状の経過を残します。休んだ後の記録にも痛みやしびれがある場合は、肩の重さの点数とは別の欄に書きます。Persson(2000)が測ったのは肩に症状のない女性の疲れの回復であり、症状を我慢して反復する課題ではありません。
よくある質問
腕がすぐ下がるのは、体力が低すぎるからですか
腕が下がるまでの時間だけで、全身の体力の低さを判定することはできません。Hagberg(1981)では腕の重さを支えるだけでも肩の筋肉に疲れの兆候が出ており、息が続くかどうかとは別に測られています。自分の記録では、肩のどこが重くなり、姿勢を保てなくなったかを区別します。長く続けられた日でも姿勢が変わっていれば、同じ条件での持久力の比較にはなりません。
休みですぐ軽くなるなら、また長く上げてよいですか
軽くなった感覚だけを理由に保持時間を延ばす判断は避けます。Persson(2000)では、電気信号で測る疲れの回復と、押したときの痛みの感度の変化は同じ経過ではありませんでした。ラウンドごとの記録には、休む前後の重さに加え、痛みやしびれの有無を残すと状態を比べやすくなります。同研究の回復は健康な女性の静的な試験後の結果で、連続してパンチを打つ練習の再開時刻を決めたものではありません。
重りを持ってガードを練習すると長く保てますか
Minning(2007)は重りを保持したときの筋肉の疲れ方を調べ、三角筋中部が他の測定筋より速く疲れると報告しました。重りを使う練習を続けた組と使わない組で、ガードの持続時間の伸びを比べた試験ではありません。したがって、この実験を根拠に追加の重りを勧めることはできません。実験の重りは疲れを起こすための条件で、初心者のガードを改善するために選ばれた負荷ではありません。
この記事の限界
ガードの疲れの根拠は、腕を上げて止める実験と、仕事で肩に負荷がかかる人の調査が中心です。HagbergやMinningの筋電図による疲れの兆候は、腱の損傷や後日の痛みを測った結果ではなく、Perssonの対象も健康な女性で、痛みのある人がガードを続けた際の回復を追った研究とは異なります。腕を上げると肩が痛む、首から腕にしびれが走る、休んでも肩の重さが何日も抜けない場合は、整形外科で状態を確かめます。いつから症状があり、何分ガードを保つと出るかを伝えます。ガードの姿勢を習う成人の初心者で、肩と首の疲れが出るまでの時間と、練習を続けた後の保持時間の変化を測る試験が待たれます。
参考文献
- Hagberg M. Electromyographic signs of shoulder muscular fatigue in two elevated arm positions. Am J Phys Med. 1981;60(3):111-21.
- Minning S. EMG analysis of shoulder muscle fatigue during resisted isometric shoulder elevation. J Electromyogr Kinesiol. 2007;17(2):153-9.
- Persson AL. Pressure pain thresholds and electromyographically defined muscular fatigue induced by a muscular endurance test in normal women. Clin J Pain. 2000;16(2):155-63.
- Svendsen SW. Work related shoulder disorders: quantitative exposure-response relations with reference to arm posture. Occup Environ Med. 2004;61(10):844-53.
- van der Molen HF. Work-related risk factors for specific shoulder disorders: a systematic review and meta-analysis. Occup Environ Med. 2017;74(10):745-755.
- Wærsted M. Work above shoulder level and shoulder complaints: a systematic review. Int Arch Occup Environ Health. 2020;93(8):925-954.
- Curti S. Shoulder Tendinopathies and Occupational Biomechanical Overload: A Critical Appraisal of Available Evidence. Med Lav. 2023;114(4):e2023033.
汗が落ちる溶岩の床の上で、最初のジャブを構えてみる
- 向く人: 相手と打ち合わずに、ミットとサンドバッグで汗をかきたい人
- 向く人: 運動から離れていて、構えとフォームから教わり直したい人
- 向かない人: スパーリングや試合で自分の強さを試したい人
- 向かない人: 手首や肩、腰の痛みで医師から運動を止められている人
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よくある質問
腕がすぐ下がるのは、体力が低すぎるからですか
腕が下がるまでの時間だけで、全身の体力の低さを判定することはできません。Hagberg(1981)では腕の重さを支えるだけでも肩の筋肉に疲れの兆候が出ており、息が続くかどうかとは別に測られています。自分の記録では、肩のどこが重くなり、姿勢を保てなくなったかを区別します。長く続けられた日でも姿勢が変わっていれば、同じ条件での持久力の比較にはなりません。
休みですぐ軽くなるなら、また長く上げてよいですか
軽くなった感覚だけを理由に保持時間を延ばす判断は避けます。Persson(2000)では、電気信号で測る疲れの回復と、押したときの痛みの感度の変化は同じ経過ではありませんでした。ラウンドごとの記録には、休む前後の重さに加え、痛みやしびれの有無を残すと状態を比べやすくなります。同研究の回復は健康な女性の静的な試験後の結果で、連続してパンチを打つ練習の再開時刻を決めたものではありません。
重りを持ってガードを練習すると長く保てますか
Minning(2007)は重りを保持したときの筋肉の疲れ方を調べ、三角筋中部が他の測定筋より速く疲れると報告しました。重りを使う練習を続けた組と使わない組で、ガードの持続時間の伸びを比べた試験ではありません。したがって、この実験を根拠に追加の重りを勧めることはできません。実験の重りは疲れを起こすための条件で、初心者のガードを改善するために選ばれた負荷ではありません。