キックボクシング・ボクササイズ選びガイド打撃系フィットネスを、宣伝抜きで整理する

公開:2026年9月11日/最終更新:2026年10月20日

痛み止めを飲んでからミットに向かう前に|運動前の鎮痛薬の研究

薬局の棚の前で、ミット打ちに行く予定と、まだ痛む肩や脚のことが頭に浮かびます。市販の痛み止めで楽になれば、予定どおりに動いてもよいのでしょうか。痛み止めで痛みが軽くなることを、ミットを打てる状態に戻った証拠にはせず、薬がないと難しい練習は内容を変える理由として扱います。 痛みを抑える目的と、体に負荷をかけてよいかという判断は、同じものではありません。

この記事の要点
  • 鎮痛薬を使う選手が多いという調査は、練習前の使用でけがを防げるという証拠ではありません。
  • 長距離走の試験では、イブプロフェン群で腎障害が多い傾向でしたが、差は統計的にはっきりしませんでした。
  • 小腸の傷の指標が上がった試験と、毎日の服用で筋肉の増え方が小さかった試験があります。
  • 痛みの場所、痛む動作、薬を考えた理由を先に記録すると、薬の選択と練習内容の相談に使えます。

痛み止めを飲んでからミットに向かう前に|運動前の鎮痛薬の研究

薬局の棚の前で、ミット打ちに行く予定と、まだ痛む肩や脚のことが頭に浮かびます。市販の痛み止めで楽になれば、予定どおりに動いてもよいのでしょうか。痛み止めで痛みが軽くなることを、ミットを打てる状態に戻った証拠にはせず、薬がないと難しい練習は内容を変える理由として扱います。 痛みを抑える目的と、体に負荷をかけてよいかという判断は、同じものではありません。

運動と鎮痛薬の研究では、使っている人の多さだけでなく、腎臓の働き、小腸の傷を示す値、筋肉の増え方が調べられています。とくに目立つのは、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬、つまり炎症や痛みを抑える薬の一群で、略してNSAIDsと呼ばれます。長い距離を走る競技や、毎日の服用を伴う筋力トレーニングには、痛みの感じ方以外の変化も報告されています。ボクササイズの初心者が知っておきたいのは、効き目を実感した後にも残る、こうした体への影響です。

要点

  • 鎮痛薬を使う選手が多いという調査は、練習前の使用でけがを防げるという証拠ではありません。
  • 長距離走の試験では、イブプロフェン群で腎障害が多い傾向でしたが、差は統計的にはっきりしませんでした。
  • 小腸の傷の指標が上がった試験と、毎日の服用で筋肉の増え方が小さかった試験があります。
  • 痛みの場所、痛む動作、薬を考えた理由を先に記録すると、薬の選択と練習内容の相談に使えます。

痛み止めを運動前に使う人が多いことと、有効であること

「競技選手も使うなら、運動の準備として役立つはず」と感じるかもしれません。Leyk(2023)の系統的レビュー、すなわち一定の基準で研究を集めて整理した論文では、競技の世界で鎮痛薬が広く使われ、痛みが起きる前に予防を期待して飲む例も取り上げられています。ここでの予防とは、使用者が期待した目的です。薬を飲むことでけがが減ったか、翌日の回復が早くなったかを確かめた結果とは異なります。

Leyk(2023)が整理した使用割合には、プロテニスの2.8%からプロサッカーの54.2%まで幅がありました。一方、持久系の運動をする50000人を超える集団では、運動に関連して少なくとも毎月使うと答えた人は2.1%でした。競技や尋ね方の違う集団が並んでいるため、この幅を一般の練習参加者の使用率として読むのは不適切です。愛好家の使用は少ないように見えるものの、競技者に比べて実態を把握するデータは乏しいと整理されています。

格闘技については、Damjanovic(2025)がドーピングに関する研究を集めたレビューで、検出される物質の中にNSAIDsも多いと報告しています。これは打撃系を含む競技選手の調査であり、ミット打ちの前に薬を使う一般の人への有効性を試したものではありません。また、ドーピングを扱う論文に登場することと、その薬の使用がそのまま禁止行為を意味することも別です。この研究が伝えるのは競技現場での使用実態で、痛みを抑えて打ち続けることの利益ではありません。

腎臓の試験は「差が曖昧だから安全」と読まない

Lipman(2017)は、ウルトラマラソンの参加者89人を対象に、イブプロフェンと偽薬を比べました。偽薬は有効成分を含まない比較用の薬で、この試験では無作為化、つまりくじ引きのような方法で群を分けています。本人と研究側にどちらの薬かを伏せる二重盲検の形で、思い込みによる違いも抑えています。調べたのは走った後の急性腎障害で、腎臓の働きが短い間に悪くなる状態です。

Lipman(2017)では、急性腎障害になった人はイブプロフェン群で22人、52%、偽薬群で16人、34%でした。薬を使った群の割合は高かった一方で、差は統計的にはっきりしませんでした。「統計的にはっきりしない」とは、この人数と結果から差を確定するには不確かさが残るという意味です。差が存在しないことを確定した言葉ではなく、薬の群で多かったという結果と併せて受け止める必要があります。

この試験で注目したいのは、偽薬群にも腎障害が生じていた点です。運動そのものが厳しい条件で行われており、腎臓の変化を薬だけの出来事として説明することは適切ではありません。薬を使った群と使わなかった群を比較することで、その条件の中で薬が加わったときの違いを見ています。Lipman(2017)の結果は、暑い環境で長く走る競技における負担の上乗せを疑う材料です。

ミット打ちの予定に置き換える際も、研究で扱った競技の厳しさは外せません。短い練習の日に同じ割合で腎障害が起きると考えるのは飛躍です。同時に、痛みが軽くなったことから腎臓の状態を判断することもできません。Lipman(2017)が測ったのは運動を続けやすくなった感覚ではなく、長距離走の後に検査で捉えた腎臓の変化でした。

小腸の変化は、腹痛の有無だけでは捉えられない

運動前の薬で気になる場所は、もともと痛んでいる肩や膝に限られません。Van Wijck(2012)は、鍛えた健康な男性9人で、イブプロフェンと自転車運動の組み合わせを調べました。同じ人が、薬を使って運動する、使わずに運動する、使って休む、使わずに休むという4条件を経験しています。運動だけ、薬だけ、両方が重なる場合を比べられる点が、この試験の特徴です。

Van Wijck(2012)では、小腸の傷を示す血液中の値と、腸の壁を物質が通り抜けやすくなる性質が、薬を使って運動した条件で最も大きく変化しました。腸には、内容物と体の内側を隔てる働きがあります。ここで測った透過性は、その隔たりを物質がどの程度通過するかを調べる指標です。痛み止めと運動の組み合わせが、小腸の傷と隔てる働きに影響したというのが著者らの結論です。

ただし、この研究の中心は検査の値であり、腹痛を訴えた人がどれほど増えたかという結果ではありません。検査で捉える変化と、本人が気づく不調は、別の測定項目です。そのため「飲んでもお腹は平気だった」という経験だけを、この試験への反証にすることは適切ではありません。Van Wijck(2012)は、症状の自覚とは別に小腸の状態を評価した試験です。

腎臓と小腸の研究を並べると、薬について確かめたい点も変わります。痛む部分に効いたかだけでなく、運動と重なったときに別の臓器で何を測っていたかが重要になります。研究ごとに比較相手と測定対象が違うので、下の表では結論をその条件と組にしています。Van Wijck(2012)の小腸の指標と、Lipman(2017)の急性腎障害は、いずれも痛みの軽減とは別に評価された結果です。

よくある期待 研究の結果 比べた相手・条件 対象
痛みが軽ければ体の負担も小さい Lipman(2017)では腎障害が多い傾向で、差には統計的な不確かさが残った イブプロフェンと偽薬 長距離走の参加者
お腹に症状がなければ腸への影響もない Van Wijck(2012)では小腸の傷と透過性の指標が上がった 薬と運動、運動のみ、薬と休息、休息のみ 鍛えた健康な男性
飲み続けて練習を続ければ筋肉も育つ Lilja(2018)ではイブプロフェン群で筋肉の増え方が小さかった 毎日のイブプロフェンと少量のアスピリン 健康な若い男女

長時間の競技では、血液中のナトリウムも調べられている

Wharam(2006)は、アイアンマン・トライアスロンの出場者330人を調べました。NSAIDsを使っていた人の割合は30%で、全体で低ナトリウム血症が生じた割合は1.8%でした。低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が低くなった状態です。この調査では、NSAIDsを使った人で低ナトリウム血症が多く、腎臓の働きを示す値にも悪い変化が見られました。

ここで、Wharam(2006)の1.8%は出場者全体の割合であり、薬を使った人だけの発生割合ではありません。また、薬の群に無作為に振り分けた試験ではなく、実際の使用と結果の関係を見た観察研究です。薬を使う人と使わない人には、服用以外の違いもあり得ます。著者らは関連を危険因子として捉えていますが、使用した人全員に同じ変化が出たという結果ではありません。

この研究は、持久系の長時間競技で体内の状態を調べたものです。ミット打ちの途中にのどが渇いたという場面から、血液中のナトリウムの状態を自分で推定するための研究ではありません。飲み物の量や塩分を自己調整すれば薬の影響を打ち消せる、という方法を試した研究でもありません。Wharam(2006)で捉えられたのは、持久競技でのNSAIDs使用と、血液や腎機能の検査結果との関連です。

筋肉の増え方を比べた試験は、毎日の服用が条件

痛みを抑えて練習回数を保てば、その分だけ筋肉が育つと期待する人もいるでしょう。Lilja(2018)は、健康な若い男女に脚の筋力トレーニングを行ってもらい、毎日イブプロフェンを使う群と少量のアスピリンを使う群を比較しました。群分けは無作為に行われています。運動後の楽さではなく、トレーニングに対して筋肉の大きさや力がどのように変わるかを調べた試験です。

Lilja(2018)では、太ももの前側にある大腿四頭筋の体積の増加は、アスピリン群で7.5%、イブプロフェン群で3.7%でした。薬を使いながら運動を続けても、筋肉の増え方は同じではなかったことになります。増加そのものがなくなったわけではなく、比べた群より増え方が小さかったという結果です。研究は、毎日の多めのイブプロフェンが筋力や筋肥大への適応を弱めると結論づけています。

比較相手にも注意が要ります。Lilja(2018)で比べたのは少量のアスピリンであり、薬をまったく使わない群ではありません。この結果を理由に、練習前の薬をアスピリンに替えるという使い方は導けません。調べたのは特定の条件での筋肉の変化であって、市販薬の選び方を決める比較ではないためです。

さらに、継続して服用する状況と、その日の痛みに対処する状況では、薬が運動と重なる期間が違います。痛みのある場所も、脚の筋力トレーニングとパンチの衝撃では一致しません。ミットを打つ力の伸びをこの数値で予測することも、研究の対象を広げすぎています。Lilja(2018)が捉えたのは、毎日の服用と脚の筋力トレーニングが続く中での筋肉の適応です。

薬の効き目を試す前に、練習を変えるためのメモを作る

薬を使う日と使わない日を自分で作り、同じ強さで打って比べる必要はありません。Leyk(2023)が取り上げた予防目的の使用と、今ある痛みへの対処を混ぜず、まず何のために薬を考えたかを言葉にします。「痛みがあるから」と「痛くなると困るから」では、確認したい内容が違います。下の項目は服薬の実験ではなく、研究で問題になった使用目的、運動との重なり、継続使用を相談用の情報にする手順です。

  • 使用目的を先に書く。 薬を考えた時点で、痛む場所、安静時か動作時か、強さを「気にならない・気になる・動作を変えるほど」の言葉で残します。Leyk(2023)が扱った予防目的の使用に対応して、まだ痛みがない場合も「予防を期待」と記し、実際の痛みと混ぜない欄を作ります。
  • 運動と休息を並べる。 Van Wijck(2012)が運動と休息を比べた条件を手掛かりに、普段の生活の中で、休んでいるときと腕を動かすときの違いを記します。薬を使う前に気づいた動作を言葉で残し、痛みを再現するためにミットを強く打つ確認はしません。
  • 継続使用かどうかを残す。 Lilja(2018)は毎日の服用が条件なので、薬を使った日をカレンダーに印し、商品名と使った理由を横に書きます。練習の予定も同じ日に記すと、痛みへの対処が練習のたびに必要になっているか、日常生活でも続いているかを伝えられます。

薬がないと打てないほどの痛みは、その日のパンチ練習を減らす、痛む動作を外す、練習を見送るといった変更を考える理由になります。これは薬をやめる指示ではなく、痛みを隠すことを参加の条件にしないための判断です。持病や併用薬がある人は、薬の箱と使用状況のメモを薬剤師に示し、予定する運動も含めて使用上の注意を確かめます。Leyk(2023)が問題として挙げた、痛みの予防を期待して使う習慣は、使用目的を書き出すことで相談の対象になります。

よくある質問

痛みが引いたら、その日は強く打ってもよいですか

痛みが軽くなったことだけを、強く打つ判断の根拠にはしません。鎮痛の実感と、負荷を受ける部位や体全体の状態は別に捉える必要があります。Lipman(2017)やVan Wijck(2012)が調べた腎臓や小腸の変化も、痛みがどれだけ楽になったかとは違う評価です。薬を考える前から動作を変えるほど痛んでいたなら、その情報を練習内容の変更と相談に使います。

市販の痛み止めなら、どの成分でも同じ結果ですか

今回の実験で中心になったのはイブプロフェンで、鎮痛薬という名前だけで別の成分にも同じ結果を割り当てることは適切ではありません。Lilja(2018)でも比較相手は少量のアスピリンであり、すべての市販薬を比べたわけではありません。薬局では商品の呼び名だけでなく、箱にある成分と、普段使っている薬を照合することが大切です。別の成分に替えれば運動前でも安心、という結論を今回の比較から選ぶことはできません。

たまに使う場合も、筋肉の増え方が小さくなりますか

Lilja(2018)が調べたのは毎日の服用と継続的な脚の筋力トレーニングで、ときどき使う日のミット打ちの成績ではありません。太ももの筋肉の増加を測った結果を、肩や腕の発達へそのまま広げることもできません。まず確かめたいのは、たまに使うつもりだった薬が、練習を続けるための習慣になっていないかです。服用した日と練習した日を並べた記録は、継続使用という試験条件に近づいているかを伝える材料になります。

この記事の限界

対象は競技選手、長距離競技の参加者、鍛えた男性、健康な若い男女が中心で、通常のミット練習前に単発で使う場合の利益と危険は、ここで引いた研究からは確定できません。痛みが繰り返す、腫れて動かしにくいときは整形外科などで服用前の症状と練習内容を伝え、尿が著しく減る、強い腹痛が続く場合も医療機関で評価を受ける必要があり、本稿はその診断や薬の使用判断に代わるものではありません。

打撃系に直接関わるDamjanovic(2025)も競技者の使用実態を扱い、一般のボクササイズで練習前の鎮痛薬を比較した試験ではありません。Van Wijck(2012)の試験では小腸の傷の指標が上がり、Lilja(2018)では継続的な服用によって筋力トレーニングへの適応が弱まりましたが、いずれも短いミット練習前の単発使用を検証したものではありません。

参考文献

  1. Leyk ほか. Analgesic Use in Sports. Deutsches Arzteblatt international. 2023;120(10):155-161.
  2. Damjanovic ほか. Doping in combat sports: a systematic review. The Physician and sportsmedicine. 2025;53(2):103-111.
  3. Lipman ほか. Ibuprofen versus placebo effect on acute kidney injury in ultramarathons: a randomised controlled trial. Emergency medicine journal : EMJ. 2017;34(10):637-642.
  4. Van Wijck ほか. Aggravation of exercise-induced intestinal injury by Ibuprofen in athletes. Medicine and science in sports and exercise. 2012;44(12):2257-2262.
  5. Wharam ほか. NSAID use increases the risk of developing hyponatremia during an Ironman triathlon. Medicine and science in sports and exercise. 2006;38(4):618-622.
  6. Lilja ほか. High doses of anti-inflammatory drugs compromise muscle strength and hypertrophic adaptations to resistance training in young adults. Acta physiologica (Oxford, England). 2018;222(2).

汗が落ちる溶岩の床の上で、最初のジャブを構えてみる

  • 向く人: 相手と打ち合わずに、ミットとサンドバッグで汗をかきたい人
  • 向く人: 運動から離れていて、構えとフォームから教わり直したい人
  • 向かない人: スパーリングや試合で自分の強さを試したい人
  • 向かない人: 手首や肩、腰の痛みで医師から運動を止められている人

このサイトはオンザショア立川店の運営者が制作しています。オンザショア立川店は立川駅から徒歩1分で、床は溶岩プレートです。

オンザショア立川店のpage:13629案内

よくある質問

痛みが引いたら、その日は強く打ってもよいですか

痛みが軽くなったことだけを、強く打つ判断の根拠にはしません。鎮痛の実感と、負荷を受ける部位や体全体の状態は別に捉える必要があります。Lipman(2017)やVan Wijck(2012)が調べた腎臓や小腸の変化も、痛みがどれだけ楽になったかとは違う評価です。薬を考える前から動作を変えるほど痛んでいたなら、その情報を練習内容の変更と相談に使います。

市販の痛み止めなら、どの成分でも同じ結果ですか

今回の実験で中心になったのはイブプロフェンで、鎮痛薬という名前だけで別の成分にも同じ結果を割り当てることは適切ではありません。Lilja(2018)でも比較相手は少量のアスピリンであり、すべての市販薬を比べたわけではありません。薬局では商品の呼び名だけでなく、箱にある成分と、普段使っている薬を照合することが大切です。別の成分に替えれば運動前でも安心、という結論を今回の比較から選ぶことはできません。

たまに使う場合も、筋肉の増え方が小さくなりますか

Lilja(2018)が調べたのは毎日の服用と継続的な脚の筋力トレーニングで、ときどき使う日のミット打ちの成績ではありません。太ももの筋肉の増加を測った結果を、肩や腕の発達へそのまま広げることもできません。まず確かめたいのは、たまに使うつもりだった薬が、練習を続けるための習慣になっていないかです。服用した日と練習した日を並べた記録は、継続使用という試験条件に近づいているかを伝える材料になります。